家庭経済の耳寄り情報

2017年03月20日

居住用超高層建築物(タワマン)に係る課税の見直し

 評価の適正化の観点から、固定資産税等について、居住用超高層建築物(タワマン)の課税の見直しが行われます。
居住用超高層建築物の居住用の専有部分の取得があった場合において、居住用超高層建築物の評価額を専有部分の床面積割合によって按分して得た額に相当する価格の家屋の取得があったものとみなして課する不動産取得税については、専有部分の床面積を階層別専有床面積補正率により補正することとされます。

① 高さが60mを超える居住用超高層建築物に係る固定資産税額、都市計画税額の按分に用いる各区分所有者の専有部分の床面積を、階層の際による床面積あたりの取引単価の変化の傾向を反映するための補正率により補正します。
② 1棟全体の評価額・税額は変更ありませんが、低層階ほど減税、高階層ほど増税になります。

原則として、納税者不利の改正です。

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改正案
1棟全体の固定資産税等を計算し、階層の際による取引単価の変化の傾向反映

各住戸の税額 = 1棟の税額 ×(各住戸の専有床面積 × 階層別専有床面積補正率(※)) ÷ 補正後の専有床面積の合計

(※) 1階を100とし、階が一階上がるごとに39分の10(約0.256)を加えた補正率

  → 高層階ほど税額が増加、低層階は税額が減少
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適用関係
 上記の改正は、平成30年度から新たに課税されることとなる居住用超高層建築物(平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものを除きます。)について適用されます。

 現時点においては、本改正はあくまでも固定資産税額などを按分する手法の改正に止まっていますが、注意しておきたいのは、本改正で見送りがなされているとしても、タワーマンションに対する国税の厳しい対応は変わらないということです。

 現状においても財産評価基本通達6項(この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は国税庁長官の指示を受けて評価する。)による否認のリスクは極めて大きいと考えられます。

 タワーマンションを活用した相続税の節税策について、国税も大いに問題にしているようですが、今回の改正は相続税を対象にしたものではなく、固定資産税と不動産取得税を対象としたものになっています。地方税の改正に関しては、総務省から改正要望が上がることが通例ですが、総務省の税制改正要望事項に本改正はありませんので、今後の相続税評価の改正が本改正の目的であることは間違いないと考えられます。

 相続税評価額に反映される固定資産税評価額に影響はないと考えられます。そもそも、再建築価格を前提とする固定資産税評価額の計算方式そのものについて現状で問題ないか議論されている昨今、タワーマンションについてのみ特別な計算方式を導入することに、立案者は二の足を踏んでいるのかも知れません。

 とりわけ、本改正により、タワーマンションの評価は高層階ほど高いことが明確化されたといっても過言ではありませんので、相続税評価額について改正がなされていないとしても、タワーマンションを活用した安易な節税には注意する必要があります。

 財産評価基本通達6項の適用要件は明確ではありませんが、裁決事例として相続開始の一月程度前にタワーマンションを購入し、約4か月後に本件マンションの売却を依頼する一般媒介契約を締結したというケースについて、財産評価基本通達6項の適用が認められています。

 この様に課税時期に近接した時点に取得等がされた財産で、その取得価額等を通じて課税時期における客観的な価額が把握しやすいケース、取得した財産の相続税評価額と課税時期前後において顕在化している客観的な価額との間には大きな乖離が認められるものについては、被相続人や贈与者が実質的に保有する財産の価値を失ったわけではなく課税時期後に、相続人や受贈者が、相続又は贈与により取得した財産を評価通達により評価した価額を大きく上回る価額で換金し又は換金することができる状況にあったものであります。

 最低限、①相続開始直前などに取得し、②相続開始直後等で換金等する場合には、大きなリスクがあることは押さえておく必要があることを心しておく必要があります。

 その他、改正法の適用は、平成30年度から新たに課税されることとなる居住用超高層建築物であり、かつ平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものは除かれますので、逃れようと思えば簡単に逃れられる制度です。このため、平成29年4月1日前や、平成30年1月1日前には、タワーマンションの駆け込み需要も想定されます。

 こうなると、タワーマンションの節税を制限したい国税の思いとは裏腹に、より多くのタワーマンションが建築されるリスクもあるわけで、残念な結果になることも懸念されます。

 タワーマンションは節税効果は高い分、大きなリスクがありますので充分にご注意ください。

青木 信三 2017年03月20日