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2018年10月20日

改正民法成立 相続で配偶者の居住権を保護するための方策

改正民法成立 相続で配偶者の居住権を保護するための方策

 改正民法が7月6日の参院本会議で可決、成立しました。

 社会の高齢化が進むにつれ、死別後に残された配偶者が住まいや生活資金を確保しやすくすることを目的にした改正です。
その対策の一つとして、配偶者自身が亡くなるまで今の住居に住める配偶者居住権(以下、居住権)を新設し、2020年7月までに施行することが決まりました。

 配偶者の居住権を保護する方策として短期的な方策と長期的な方策がありますが、今回は長期的な方策について説明いたします。

 高齢になった配偶者が今の住居に住み続けることの出来る居住権を新設し、残された配偶者が生活に困窮するのを防ぐ仕組みです。 
現在の民法では遺産分割について、遺言がなく配偶者と子供とで分ける場合、配偶者が2分の1を相続し、残りの2分の1を子供の人数で分けます。 

例えば次の例を考えてみましょう。

夫が亡くなり、妻一人と子供一人が相続する場合で考えてみましょう。 (遺言が無い場合)

現行制度でも、妻は遺産分割で住居の所有権を得れば継続して住み続けられます。
しかし金融資産が少なくなります。
もし所有権の代わりに居住権を得れば、その評価額が下がり、金融資産を多く受け取れます。

右の図で説明しますと、夫の死後、遺言が無い場合、妻と子供はそれぞれ2,500万円ずつ受け取ることになります。
現行制度において、妻が今迄の家に住み続ける場合は、住居の所有権として2,000万円受取りますので、金融資産の取り分は500万円になります。
この500万円では老後の生活が不安になります。
しかし、改定制度では、妻は居住権として1,000万円を受け取るため、金融資産が1,500万円に増加し、より安心な老後生活を送ることが出来ます。
この居住権は、例え子供が所有権を売却しても、妻が一生住むことのできる権利です。 

 もう一つの改定として、婚姻期間が20年以上の場合、今まで一緒に住み続けた住居を配偶者に生前贈与するか又は遺贈する場合、その住居は遺産相続の対象から外れます。
その結果、配偶者の金融資産の取り分が増えることになります。

 これらの新しい制度を上手に活用するには条件がありますので、神奈川県ファイナンシャルプランナーズ協同組合にお尋ねください。
当組合ではご質問された方々に丁寧に分かり易く説明いたします。

岩崎 康之 2018年10月20日