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家庭経済の耳より情報

2012年06月20日

太陽光発電システムの設置の際は電気料金の収支を十分に検討しましょう

 電力料金値上げが間近に迫っていますが、それに伴い節電や省エネを意識し太陽光発電への期待が増しています。今回はこれから伸びることが予測される太陽光発電の設置費用および電気料金の収支について調べてみましょう。

1.太陽光発電システム設置にはいくらかかるのでしょうか?
家庭用太陽光発電の工事費を含む設置コストは平成23年度において1kWあたり平均52.1万円、平均設置容量4.34kWでした。(太陽光発電普及拡大センターによる)
これを単純にかけ合わせると太陽光発電システム設置には、およそ226万円かかることになります。

●太陽光発電システムを設置すると国と県と市の3か所から補助金が出ます。
ただし、国の補助金額は年々少なくなっています。
平成24年度は対象システム1kWあたりの補助対象経費によって以下のように金額が異なっています。
    補助対象経費47.5万円超55万円以下の場合30,000円
    補助対象経費3.5万円超 47.5万円以下の場合35,000円
詳しくは太陽光発電普及拡大センターのサイトを参照してください。 太陽光発電普及拡大センター

 神奈川県の補助金は対象システム1kWあたり1.5万円、ただし上限額は5.2万円、県内各市町村の補助金は市町村で金額が異なりますが、横浜市の場合対象システム1kWあたり1.5万円、上限額は6万円となっています。
他の市町村は以下のサイトを参照してください。 神奈川県補助金

設置容量が4.34kWであると仮定すると、
  国の補助金:    30,000円×4.34=130,200円
  神奈川県の補助金: 52,000円(15,000円×4.34=65,100 >52,000円)
  横浜市の補助金:  60,000円(15,000円×4.34=65,100 >60,000円)
合計242,200円となり、設置金額226万円から補助金を差し引くと2,017,800円となります。・・・A


2.太陽光発電を導入した場合、電気料金の収支はどうなるのでしょうか?
 まず電力料金システムをよく知ることが重要です。電力会社からの「電気使用量のお知らせ」を見ると従量電灯1段料金(~120kWh)、2段料金(120~300kWh)、3段料金(300kWh~) があり、3段料金は最も高くなっています。したがって多く使うほど高くなる仕組みになっています。
一世帯当たりの月間総消費電力量は太陽光発電協会の試算では平均470.8kWhとなっています。
計算すると基本料金、燃料費調整などを除くと月間電気料金は10,381円となります。・・・B

太陽光発電の発電量を調べてみましょう。
  太陽光発電設置容量4.34kW
  横浜市の日照時間は月間平均158時間(気象庁平年値分布図より)
  太陽光発電効率を70%と仮定すると、
  月平均発電量は 4.34kW×158時間×70%=480kWh

一世帯当たりの月間総消費電力量とほぼ同じ値になりましたが、全てが太陽光発電で賄えると思うと大間違いです。太陽光発電は太陽が出ている時間しか発電できないので蓄電池が無ければ、発電できない時間帯は従来通り電力会社から電気を購入する必要があります。
実際に設置した世帯で発電量のうち自家消費した割合は約40%という調査結果があります。(財団法人新エネルギー財団)
一世帯当たりの月間総消費電力量平均470.8kWhのうち実際に太陽光発電で賄える電力を差し引いた残りは
470.8kWh-(480kWh×40%)=278.8 kWh 
従量電灯料金で計算すると5,775円となります。・・・C
では、発電量の残りの60%はどうするか?

●太陽光発電で発電した電気を電力会社に買い取ってもらうことができます
太陽光発電の余剰電力買取制度として買取条件が法令で定められています。
平成24年6月までの買取価格は42円/kWh、7月からの買取価格は未定ですが、30円台後半に下がることが予想されます。法令で当初決められた買取価格は10年間継続されることが保証されていますので、本年6月までの駆け込み契約が増えています。
月平均発電量480 kWhの60%を電力会社が買い取るとすると売電による月間売上は
42円/kWh ×(480kWh×60%)=12,096円・・・D

以上をまとめると
  太陽光発電導入前の電気料金     10,381円・・・B
  太陽光発電導入後の電気料金      5,775円・・・C
  余剰電力買取による収入       12,096円・・・D
  太陽光発電導入後の収支        6,321円・・・E=D-C
  太陽光発電導入による月間節約金額  16,702円・・・B+E
  設置コスト            2,017,800円・・・A
月間節約金額で設置コストを割ると10.1年(121ヶ月)で初期投資費用である設置コストが回収できることになります。


 太陽光発電システムメーカーは太陽光を電気に変える変換モジュールの変換効率向上、モジュール製造コスト削減などコストダウンに努力しています。また、現在は高額である蓄電池設備の低価格化が進めば、太陽光発電の電力を蓄電池に溜めて夜間などに使用することも可能となります。さらに蓄電池の代わりに電気自動車の電池を蓄電池として使用するスマートハウスの提案も現実的になって来ました。

 一方近年、太陽光発電の新しいビジネスモデルで発電パネルメーカー主導からシステム販売業者主導に変わり設置コストが急激に下がっています。太陽光発電電力料金が20円/kWhを切るシステムも出てきています。これは世界で事業用大規模太陽光発電が普及してきたために安価なシステムが海外から入ってきたためです。しかしながら、販売業者や施工業者の中にはこれらの低価格システムに対抗する価格を打ち出すために質の悪いサービスや悪い材料を提供する例も見られるようになってきました。

 実際に設置する場合には住宅ローンと同程度の金利のソーラーローンで設置費用を借りることもできます。また、設置には複数社から見積りを取り、施工方法など十分に検証することも住宅建設と同様に、慎重に行うことが必要です。

  

池 俊夫 2012年06月20日