家を持つ

家庭経済の耳より情報

2012年07月30日

家は『資産』?~家を持つ前に知っておくこと~

人は 様々な目的のために家を持とうと考えます。

家族の成長の場、憩いの場として。

子どもたちの中に思い出を残し、故郷とするために。

生涯変わらない、安定した住む場所を確保するために。

家(不動産)という資産を手に入れるために。

運良くインフレとなれば資産価値がさらに増大し、いい意味での投資となるから。

あなたの場合はいかがですか?

「資産」としての家~日本の現状~

実は日本では家は20年経過すると資産価値ゼロとなります。

いわゆる消耗品の扱いなのです。

不動産の全住宅流通量(既存流通+新規着工)に占める中古住宅の流通量を見てみると日本は約14%。米国の約78%、イギリスの約89%と比べると極端に低いのです。

これは日本の中古住宅の価値がいかに低いかの証ともいえます。

欧米諸国ではどうでしょうか。

良い住宅を購入して何世代にわたり住み続ける。あるいは手入れをして価値を高めて転売する。そこには「資産」として扱われる住宅の形が見えます。

初めの住宅価格が高く、そのわりに中古となると価値が下落する日本の状況ではそうはいきませんね。

世代ごとに一軒、新規に家を持つということを繰り返していては、代々住宅ローンを抱えて、住宅貧乏に苦しめられることになります。

日本でも欧米のように、住宅を「資産」として考え、持つことが非常に大事となります。

ようやく政府、国土交通省も「100年住宅」制度(100年間住み続けられる優良住宅)をうちだしました。

国土交通省の国家戦略会議でも「ストック重視の戦略への転換―中古住宅の流通市場・リフォーム市場の環境整備」と、政策は転換されつつあります。

家庭経済のバランス

それではここで居住用の家を購入した場合の家庭経済のバランスについて、バランスシート(B/S)の純資産の例をあげて考えてみましょう。

なお、純資産=総資産-総負債で求めます。

① あなたには現金が1,000万円あります。(純資産は1,000万円-0=1,000万円)

② あなたは4,000万円の家(土地2,000万+建物2,000万円)を
頭金1,000万円(現金を充当)とローン3,000万円(30年返済)で購入することにしました。

家を購入した後、あなたの純資産はいくらになったでしょう?

現金はすべて使ってしまったので、
4,000万円(土地2,000万+建物2,000万円)-3,000万円(ローン)= 
1,000万円ですね。

③ ところがここで問題になるのが先ほど述べた日本の住宅事情です。

なんと新築であっても、家は住むことにより中古住宅となり、即80%程度の価値になります。家の「時価」は2,000万円×80%=1,600万円になりました。
3,600万円(土地2,000万+家1,600万円)-3,000万円(ローン)= 純資産600万円

わが家のB/Sは(時価で計算するので)家を持つことにより純資産は400万円、減少してしまいました。

④ そして、さらに忘れがちなのがローンの総支払金利です。

総支払金利を1,000万円とすると、この金利はあくまで借入金額(負債)ではありませんので、純資産は③の600万円と変わりません。

しかし、30年間にわたり元本と一緒に支払う義務があるという意味でB/Sには載らないものの、1,000万円の負債(隠れ負債)があることとなります。

以上、「家を持つ」といわゆる財産3分法(不動産、現預金、有価証券を3分の1ずつ持つ)という望ましい資産の配分比から大きくはずれます。(不動産偏重)

さらに、一時的には純資産が減少してしまい、隠れ負債を背負うこととなります。

そして、苦労して30年後にローンを払い終わった時点では、「家」の価値は「零」です。

豊かな人生設計のために

このように、「家を持つ」ことのデメリットを十分認識していただきたいものです。

すなわち、家庭経済のバランスを理解しつつ「家を持つ」ことについて考える必要があるのではないでしょうか?

最初に考えたあなた自身が「家を持つ」ことの目的・意味を積極的にとらえ、豊かな人生設計のためにも前向きに考えたいものです。

今泉 明信