相続を考える

家庭経済の耳より情報

2014年11月10日

相続税改正と生命保険

 平成27年1月1日から相続税・贈与税の改正が施行されます。主な改正点は、基礎控除縮減(現行額の60%)と最高税率アップ(50%から55%へ)であり、久ぶりの増税となります。

 死亡者数に対する相続税の課税件数の割合が、平成24年では4.2%となっています。つまり、実際に課税があった被相続人(死亡者)の数は100人のうち4.2人ということです。しかし、今後は相続税の基礎控除額の改正に伴い、課税される人の割合が増えることが予想されます。
以上の考察から、早めの相続対策に関心が高まっています。

 今回は有効な相続対策の1つである生命保険の活用方法について、1例を取り上げてみます。
相続財産としては、主に不動産と金融資産があります。金融資産のうち現預金は相続発生時の残高で評価され、課税されます。
生命保険契約形態として税金別に以下3つの方法があります。

    契約者  被保険者   受取人  税金の種類
 Ⅰ   夫    夫      妻    相続税
 Ⅱ   父親   母親     子供   贈与税
 Ⅲ 子供(35歳) 父親(60歳) 子供(35歳)  所得税

この中で今回注目したいのは、3番目の税金が所得税の場合です。

(契約する保険内容)
  終身保険
  保障額 1,200万円
  保険料累計 1,028万円
  支払期間 10年

 父親名義の1,028万円の現預金を毎年102.8万円ずつ子供に10年間にわたり贈与します。子供は贈与された資金で終身保険の保険料を支払います。毎年の102.8万円は暦年贈与税の非課税枠110万円の範囲内ですので、税金がかかりません。このケースで父親が10年経過後亡くなった場合の保険の課税は一時所得扱いで次の通りとなります。

 (1,200万円-1,028万円-50万円)÷ 2 =61万円
 61万円×5%=3.05万円
 手取り額:1,200万円-3.05万円=1,196.95万円

 仮に、同じ保障1,200万円として、相続税の場合、生命保険の非課税枠500万円(相続人1名)を考慮したとして税率は10%となりますので、

 (1,200万円-500万円)×10%=70万円
 手取り額:1,200万円-70万円=1,130万円

 以上比較から、所得税扱いの手取り額の方が大きいことがわかります。
メリットとしては1,028万円を生前贈与できること、相続税納税資金の準備になることから、所得税を使った保険契約は相続に関して有効な対策です。

佐藤 博信 2014年11月10日