相続を考える

家庭経済の耳より情報

2015年04月20日

「家族信託」と言う相続に代わる遺産承継の活用

 「信託」とは、文字通り「信頼する人」に「財産を託する」と言うことです。
その起源は、昔、十字軍に出征した英国貴族が自分の家族の生活を守るため、その財産の管理を最も信頼できる友人の貴族に託したことに始まる、と言われています。

 日本ではこれ迄、信託銀行に財産の管理を依頼する商事信託(営利を目的とする業としての信託)のみが行われてきましたが、平成19年、信託法の全面改正により、一般の個人や企業が事由に信託を活用することが出来るようになりました。
これが、信託銀行の行う「商事信託」に対し、「民事信託」、いわゆる「家族信託」と呼ばれる信託契約です。

 では、どのようなときに活用するとメリットがあるのでしょうか。財産の管理と言う意味では中小企業の事業承継がらみ等財産の承継としての活用ももちろん出てきますが、ここでは家族信託に絞ってご案内いたします。

通常、相続では単に遺産としての財産を受け継ぐのみです。残された妻や子が健康な方であればそれで問題ないかもしれません。しかし親族の中に認知症の妻や知的障害の子がいたらどうでしょうか?お金だけもらっても自分で使うことが出来ず、誰かを頼るしかありません。せっかく受け継いだ財産が奪われてしまうかもしれません。

こうした場合、これまでは、認知症の母の面倒を見る、もしくは知的障害の兄弟の面倒を見ることを条件に、兄弟の一人に多くの財産を相続させる、いわゆる負担付遺贈が行われて来ました。ところが遺言で希望を残しても拒否されることもあり、お金だけ受け取って義務を果たさない、果たしていてもその方が先に亡くなってしまった場合、あとを引き継ぐ人がいない、などという問題点がありました。
遺言では負担を果たす方がなくなった後を引き継ぐ人を指定することは出来ません。そこで終わってしまいます。

ところが「信託では」遺産を信託財産にし、予め契約書に様々なことを想定して【委託者】が義務(信託行為)を執行する【受託者】を複数又は順次指定したり、場合によっては変更したり出来る内容を明記することで、残された障害を持つ遺族である【受益者】を最後まで守ることが出来ます。(福祉信託とも呼ばれます。)

 契約書は、公正証書遺言と同様、公証役場にて公正証書で作成します。細かい条件設定や契約書案については法律知識のある専門家に依頼した方が良いでしょう。

また、私たち神奈川県FP協同組合でも、ライフプランのアドバイスと絡めて専門家とのネットワークにより皆様のお役に立つ窓口としての対応が可能です。
遺言書では不可能なことを可能にする「信託」。
一度検討してみてはいかがでしょうか。

山口 貴之  2015年04月20日