相続を考える

家庭経済の耳より情報

2016年01月10日

「教育資金」と「結婚・子育て資金」の一括贈与の非課税制度の注意したいポイント!

「教育資金の一括贈与」と「結婚・子育て資金の一括贈与」非課税制度は、前者は文部科学省で後者は内閣府と所轄が違いますし、その運用はそれぞれ細かく規定されていますので注意を要します。

 まず、「教育資金の一括贈与」は29歳までの孫や子に贈与した場合、1,500万円まで非課税になる制度で、2019年3月末まで延期されました。 
 
注意点としては、教育資金として認められる範囲が細かく定められている点です。たとえば、学校等以外の支払いは500万円が限度(1,500万円の枠内)で、学習塾、バレエ教室、ピアノ教室、スイミングスクール、茶道、習字、自動車学校、などは対象となりますが、カジノを教える教室、カラオケ、手品、麻雀、などは対象となりません。

また、下宿代(学校等の寮費はOK)、奨学金の返還金、通学用の回数券やその都度支払うバス代(定期券はOK、ただし塾や習い事の定期券代はダメ)、受験の交通費、なども対象外で、法令等で細かく規定されていますので注意を要します。

そして、対象となる贈与者は、祖父母だけでなく直系尊属(祖祖父母、祖父母、父母等、養父母も含まれ離婚後も可能)が対象となりますが、配偶者の直系尊属や叔父、叔母、兄弟は対象となりません。

 一方、「結婚・子育て資金の一括贈与」は、「結婚・出産・育児」資金の贈与に、20~49歳の孫や子に対して1人当たり、1,000万円(結婚費用は300万円(1,000万円の枠内)まで)非課税になる制度で、今回創設されました。

これも、細かく手続きが規定されていて、贈与者は金融機関と「結婚・子育て資金管理契約」を締結し、金銭を預け入れ、受贈者は「結婚・子育て資金非課税申告書」を金融機関に提出、引出し時には「領収書」提出が義務づけられています(口座引き落としやクレジット決済も可能です)。

そして、主たる居住地のみ対象となっていて、たとえば単身赴任先の家賃は認められていません。また、出産も海外での出産の宿泊費は不可となり、子の医療費も処方箋に基づかない医薬品や交通費は不可となっています。

 しかし、そもそも教育資金や結婚・子育てにかかる資金は、その都度の贈与であれば金額にかかわらずもともと非課税です。

贈与税は相続税法で、非課税になるものを列挙していまして、「扶養義務者から生活費又は教育費として贈与を受けた財産のうち通常認められるもの」と規定しています。
また、所得税でも、「扶養義務を履行するための金品」は非課税とされています。この「扶養義務者」とは、所得税の扶養控除の条件とは全く関係なく、所得制限はありません。
そして、通常の家族(配偶者、親子、兄弟姉妹、3親等以内の親族で同じ財布で生活している場合)は手続きをしなくても非課税です。

それに対し、一括贈与の非課税制度を使った場合、中途の解約は認められず、また、一定年齢時に使い残した場合、逆に贈与税がかかってしまいますので注意を要します。

 いずれにしても、詳細は「教育資金の一括贈与」に関しては「文部科学省HPの教育資金Q&A」を、「結婚・子育て資金の一括贈与」に関しては「内閣府HPの結婚・子育て資金の範囲に関する情報」を細かく参照し、あとで後悔のないようにしたいものです。

土井 健司 2016年01月10日