2023年03月25日
不動産投資の詐欺被害に合わないために
日本経済はずっとデフレが続き、金融機関に預けていてもお金は増えません。そんな中不動産を購入し、家賃収入をとることにより、安心した暮らしができますよ!と言葉巧みに勧められ、被害にあっている方が急増しています。実際に私の知り合いの方がこんな話を聞いたそうです。
仕事などの専門知識は十分持っているのに、金融リテラシーが足りないために投資の甘い罠にはまってしまったようです。
ご夫婦はキャリアウーマンと専門職の共働きでずっと働いてきました。毎日は充実していて、趣味は海外旅行、時間があるとよく出かけていました。自宅を所有することにはあまり関心が無く、賃貸物件でロケーションのいいところに住んでいました。
仕事仲間の友人という人から誘われ、金利の低い時代に、賢い投資の方法があるよ、という話から始まりました。
今人気の都内の駅からすぐのデザイナーズハウスの1室に空きがあり、すぐ決めないと売れてしまうと言われた。またこの物件なら家賃を高く設定しても、若い女性がすぐ入りますよという事で、即決のような感じでまず最初の物件を購入。新しい物件だったこともあり、順調に家賃も入りこれはいいと満足したご主人が奥さんに黙ってもう1件。1階にある事務所向けの間取りだったので、勧められるままこれも即購入。直ぐに借り手も現れ家賃設定も高めでも問題なく入ったとか。
そしてもう1件、今度は住宅用の駅から遠いマンション、こちらは物件も見ないで住宅ローンを組み、自分が住むという条件でフラット35を利用し住民票も移してくれという事で疑うことなくローンを組みました。
不動産会社任せで、自分が住むことなしに賃貸として貸し出し中。こちらも奥さんには相談もなく、話が進んでいたとか。コロナが蔓延し、事務所用に貸していた法人が売り上げ減少で撤退、個人に貸していたワンルームマンションも退去。
家賃も下げなければ次が決まらないかもしれないと言われ、初めて奥さんに話して大騒動になったという事でした。
それにしても家賃が入らず、奥さんに内緒でマンションを所有し、固定資産税、火災保険、住宅ローンの返済など支出が増えていくばかりに慌てたことでしょう。
この方のようなケースは共働きで高収入のディンクスのご夫婦が陥りやすいパターンだと実感しました。
FPとして家計の相談を受ける時、共働きのご夫婦の何割かはお互いの収入や、貯蓄額などについて詳細は知らせず、生活費は折半で、家にかかるものはご主人、遊びの費用は奥さんなどと分担している方が見受けられます。
やはり家計はご夫婦で情報を開示し、一つの財布で管理する方が大きなリスクを抱えないのではないかと思います。
神奈川県FP協同組合では、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の扱っているフラット35の内容について改正などあるたびに、機構の方からレクチャーしてもらう勉強会を時々行っています。
その時に、自己の居住用としてフラット35を組み、賃貸として貸し出す悪質な不動産投資が増えているというお話がありました。
正にこのケースに引っかかっていたのです。
それにしても、不動産投資で簡単に儲かるという甘い罠にはまらないよう注意点を挙げておきます。
1.フラット35を投資用物件に使うことは違反
フラット35とは住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して融資を実施している住宅ローンです。
(国土交通省と財務省が所管していた住宅金融公庫の業務を引き継いだ、独立行政法人)。
自己の居住用の住宅を購入したり、新築したりする方向けのローンです。資金使途が申込本人、またはその親族の方が居住する住宅に限られるからです。
返済期間は最長35年、保証人が不要、団体信用生命保険に加入できなくてもローンが利用できるなど特徴がありますが、投資用の物件に使うことは違反要件として犯罪になります。
不正な目的で融資を受ける事はローン契約違反であり、住宅金融支援機構から融資の残債について一括返済請求を求められます。つまり不動産業者から勧められ、犯罪の片棒を担いでしまう事になります。
2.不正融資
2018年に起きた「かぼちゃの馬車」事件です。多くの被害者が出てニュースで取り上げられたのは、大手地方銀行による不正融資でした。
融資を受ける際、借りたい人の収入、融資物件の価格、返済期間、ローンの金利などから融資額を決めます。
その時の融資条件を有利にするために通帳コピーや源泉徴収票を改ざんし、実際より多くの預金残高や収入があるように見せかけ不正に融資を通す手口です。本来であれば到底、融資されない額を借り入れられてしまうのです。
3.サブリース詐欺
「サブリース」とは、オーナーが所有する物件をサブリース会社が一括借り上げし、入居者に転貸することです。すべてが詐欺ではないですが、サブリース契約にはトラブルが多く被害に遭う方が増えているといいます。
消費者庁からも、次のように、サブリース契約に関するトラブルが注意喚起されています。
① 契約期間中や契約更新時に賃料が減額される可能性があります。
② 契約期間中でも契約が解約される可能性があります。
③ 家賃を受け取るだけでなく出費がある場合もあります。
④ 融資審査の不正を行われたという事例もあります。
4.節税効果 「マンション投資は所得税の節税になる」という誘惑
5.家賃保証制度
空室でも安心できるという業者からの説明、などいくつもの甘い誘いが飛び交っています。不動産投資は決して簡単に儲かるものではありません。業者が言う表面利回りや、不動産物件の場所、品質、適性価額は正確で問題はないのか?将来の年金不足、老後への対策など偏った情報に振り回されないよう気をつけましょう。
若い方だけでなく、退職後の暮らしへの不安から詐欺に遭わないよう、正しい知識と信頼できるFPなどに早めに相談することで、リスクを回避することをお勧めします。
佐藤 房子 2023年03月25日