家庭経済の耳寄り情報

2023年05月10日

購入時に中古マンションの寿命を考えましょう

 先日、友人の60歳の友達が34歳の時に築32年の中古マンションを購入し、マンション寿命が近づいてきて困っている話を聞きました。(現在築58年) これから中古マンションをご購入される方が、将来マンション寿命で困ることが無いように一緒に考えたいと思います。


 近年、新築マンションの購入価格が高くなってきていますので、中古マンションの購入が増加しています。 (公社)全国宅地建物取引業協会連合会  不動産総合研究所によりますと、首都圏に於ける2021年の新築マンションの契約件数は24,655戸です。 一方中古マンションの成約件数は39,812戸で全体の成約数の約62%を占めます。 これは平均㎡単価が首都圏の新築では93.6万円ですが、首都圏の中古では59.8万円と新築の概ね64%の価格で購入できる点が大きなメリットと考えられます。 

出典: 不動産市場動向データ集 
(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 不動産総合研究所 2022年6月
不動産市場動向データ集

● マンションの寿命

✔ マンションの寿命はどの様なものか簡単に知っておくことをお勧めします。
✔ (鉄骨)鉄筋コンクリート造りの一般建物の構造体としての耐用年数は120年位になります。 これは通常のコンクリートの中性化速度から算出されます。 
✔ 一方(鉄骨)鉄筋コンクリート造りの住宅としての日本での平均寿命(残存率が50%になる期間)は68年です。 

出典:平成25年8月 国土交通省 土地・建設産業局不動産業課 住宅局住宅政策課
期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新期待耐用年数の導出及び内外装 設備の更新による価値向上について

● 法的耐用年数

✔ 「マンションの寿命」と「法的耐用年数」とは異なります。 法的耐用年数は国税庁が税金を計算する上で設定した会計上の数値でマンションの寿命とは関係のない数字です。 
✔ (鉄骨)鉄筋コンクリート造りの法的耐用年数は47年で、住居としての平均寿命は68年ですので、約20年の開きがあります。 
✔ 但し、法的耐用年数を超えたマンションを購入する場合、住宅ローンの融資が難しくなる場合があります。

① 中古マンションを探す場合は、ご自分で次の項目を検討なさることをお勧めいたします。

● 購入するマンションの築年数の計算
築60年後の計画があるマンションの場合は省略できます。(マンションの延命又は建替など)

✔ ご夫婦の余命の長い方とマンションの平均寿命を比べて、必要なマンションの築年数を計算します。
✔ 例えば現在夫婦同年齢の35歳の場合:夫の余命47.4歳、妻の余命53.4歳、長生きリスク等の不確実性の為5歳加算。 マンションの平均寿命を68年とします。 求めるマンションの築年数は次になります。 68 – ( 53 + 5 ) = 10  よって、築年数が10年以内のマンションを探します。
✔ 例2として、現在夫婦同年齢の40歳の場合:夫の余命42.6歳、妻の余命48.4歳、長生きリスク等の不確実性の為5歳加算。 マンションの平均寿命が68年とします。 求めるマンションの築年数は次になります。 68 – ( 48 + 5 ) = 15  よって、築年数が15年以内のマンションを探します。

● 管理組合がしっかりしていて、定期的な活動を行い、また定期的な会議を開き議事録を配布していること。 毎月または少なくても3か月毎に開催されていること。

● 耐震基準を満たしているかの確認 ⇒ 出来るだけ新・新耐震基準(2000年基準)の物件を選択

✔ 新耐震基準:1981年(昭和56年)6月以降の建築確認、建築確認が不明の場合は目安として1984年(昭和59年)以降に竣工されたマンション
✔ 新・新耐震基準(2000年基準):2000年(平成12年)6月以降の建築確認、建築確認が不明の場合は目安として2003年(平成15年)以降に竣工されたマンション

● 構造として、鉄骨鉄筋コンクリート造りのマンションを選択

● 大規模修繕の費用の確認

✔ 修繕積立金が国税庁ガイドラインの平均値位を選択していること。目安として250円/㎡・月
✔ 大規模修繕の期間が10年~13年で実施していること。今後2回以上の大規模修繕の計画があること。
✔ 大規模修繕の積立金が計画通りあること。
✔ 海岸沿いのマンションの場合は塩害対策を修繕計画があること。

● 築60年後の計画はどの様になっているかの把握 (マンションの延命、又は建替)
この計画がある場合には、購入するマンションの築年数の計算の項目を考慮しなくてもよいです。


✔ マンションを延命する場合、築50年後以降に次の改修工事が計画されていること。 
汚水管改修工事、雑排水改修工事、給水設備改修工事、玄関ドア改修工事、バルコニーサッシ改修工事、窓部サッシ改修工事、エレベーター改修工事など
✔ マンションを建替する場合、建築費が修繕積立金で賄えるか、または不足額が提示されていること。 不足額がある場合、支払う目途が立つこと。  
マンション住民だけの土地持分で、現在と同等以上の広さのマンションに建替えられること。(建ぺい率の観点から確認する。 時々駐車場部分などの土地が売り主の持分になっている場合があるので注意すること)
建替期間中の仮住居の手配に関して決めてあること
✔ これらの計画が無い場合には、購入時点でマンションの寿命とご夫婦の余命を考量すること

● リホーム工事に関しての注意書きがあること

✔ 各戸のリホーム工事に於いて、躯体コンクリートを削ることの禁止、及び穴あけなどの禁止項目があること。

出典:国土交通省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の見直しについて
「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の見直しについて

② 気に入ったマンションが見つかった後、購入前にすること (上記①を満たすことが条件)

● インスペクションの実施

✔ 気に入った物件が見つかった場合、購入前に売り主の承諾を得てインスペクションを実施することをお勧めします。 インスペクション業者は不動産業会社に紹介してもらえます。  
住宅瑕疵担保責任保険法人の登録検査事業所であるかを確認します。 
✔ インスペクションには立ち合いが必要です。 検査当日は検査している内容を一緒に確認し、分からない数値などはその場で確認します。 費用は概ね10万円以下になると思います。 
✔ 自治体による補助がある場合もありますのでご確認をされるのがよいです。
 
● 既存住宅売買瑕疵保険に加入

✔ インスペクションした建物をご購入する場合は、既存住宅売買瑕疵保険に加入されるのがより安全です。

出典:一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会「既存住宅売買のかし保険(個人間売買タイプ)」
既存住宅売買のかし保険(個人間売買タイプ)

 中古住宅とは言え、住宅購入は人生で最も高価な買い物です。 念には念を入れてご検討されることを望みます。  
仲介不動産業者は売れればよいので、今回説明したような詳しい説明が無いと思います。 また金融機関は変動金利で融資が出来ればよいのです。 両方共、自社のことを考えて営業をいたします。 あなたの将来設計は中立的立場のFPがライフプランを作成してご説明し、あなた方をご支援いたします。 もし少しでもご不明な点がありましたら、是非FPにお尋ねください。

岩崎 康之 2023年05月10日