家庭経済の耳寄り情報

2023年07月25日

第3号被保険者への健康保険・厚生年金保険の適用拡大を考える

パートタイマーなどの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険(以下、被用者保険)の適用拡大については、すでに2016年10月1日から実施されています。2020年5月29日に年金制度改正法が成立し、2022年10月1日に、短時間労働者への被用者保険の適用拡大が施行されました。そこでこれまで配偶者の扶養の範囲内で働いて、国民年金の第3号被保険者であるため、国民年金保険料の負担がない方への影響について考えてみましょう。

特定適用事業所
特定適用事業所とは、2016年10月当初は常時500人を超える事業所規模でしたが、2022年10月には常時100人超規模に改正されました。また、2024年10月からは常時50人超規模に改正されます。

短時間労働者の適用条件 短時間労働者が特定適用事業所で被保険者保険の被保険者となるには、次の4
条件を全て満たすことが必要です。
・週の所定労働時間が20時間以上であること
・賃金の月額が8万8,000円以上であること
・雇用期間が2ヵ月を超えて見込まれること
・学生でないこと

上記4つの要件を満たし、常時100人超規模の特定事業所で働いている方は被用者保険が適用されます。また、2024年10月からは常時50人超規模の特定事業所で働いている方も適用されます。

被用者保険加入者の保険料と給付の影響

被用者保険の適用拡大により、被用者保険に加入することになった場合、保険料の半分は事業主負担となります。国民年金の第3号被保険者が厚生年金保険に移行することで、障害年金・遺族年金・老齢年金の3つの保障が充実します。厚生年金に加入中に初診日のある障害については、障害等級1・2級の場合、障害基礎年金に加え、障害厚生年金の上乗せがあり、加入期間が短くても一定(300月分)の給付が確保されます。遺族年金については、遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金が上乗せで給付されることになります。老齢年金についても、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金が上乗せで受給できるようになります。

年金保険料額と増加する年金額の概算

年間給与が120万円で、配偶者の扶養の範囲内で働いていた方の場合で比較してみましょう。以下の図表のとおり、国民年金の第3号被保険者であるため国民年金の保険料の負担はありません。厚生年金保険に加入すると給与額が同じ場合、月額9,000円(図表㋐)の年金保険料を負担することになりますが、加入期間が10年で将来の年金額が月額5,000円(図表㋑)増額されます。      

人生100年時代

平均寿命が伸びている現在、90歳での生存率が男性は4人に1人、女性は2人に1人となっています。まさに人生100年時代です。公的年金は一生涯支給されます。厚生年金保険料負担が増えますが、退職後に老齢年金額が増えることを考えると厚生年金保険に加入することに対する抵抗感は少なくなると思います。

田邊 勝彦 2023年07月25日