家庭経済の耳寄り情報

2024年08月10日

キャッシュレス決済を推進しましょう。

「近代日本経済の父」と呼ばれる実業家、渋沢栄一をデザインした一万円札。
日本で最初の女子留学生としてアメリカで学んだ津田梅子をデザインした五千円札。 破傷風の治療法を開発した細菌学者の北里柴三郎をデザインした千円札。 新紙幣の発行が(2024年7月3日)始まりました。20年ぶりの新紙幣発行の話題とともにATM、券売機、自動販売機等の機械の改修が必要となっています。

銀行のATMや鉄道の券売機はシステム改修がおおむね終了したようですが、飲料の自動販売機では更新が追いつかず新紙幣が使えないケースがあるようです。一方でこの機会に自動販売機を完全キャッシュレス化(現金お断り)にする店も増えています。このように新紙幣がキャッシュレス化の推進に寄与している側面があります。

2019年6月に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」で、2025年6月までにキャッシュレス決済比率を40%にすることを目指し、キャッシュレス化の推進を図ることになりました。
ここ5年ほどで完全キャッシュレス化のお店が増えています。東京ドーム、エスコンフィールド、楽天モバイルパークなどの完全キャッシュレス球場のほかに無人コンビニ、ラーメン屋、駐車場、バーベキュー場などでも完全キャッシュレス化が進んでいます。キャッシュレス決済比率の推移を見ると2010年13.2%だったのが、2023年39.3%と約3倍になっています。政府目標のキャッシュレス化比率達成に向けて順調に推移しています。

日本でキャッシュレス化を進める理由は主に3つあります。
1つ目は人手不足の解消です。少子高齢化が進むなかで人材不足が懸念されています。レジ業務を簡易化できるというメリットがあります。 キャッシュレス決済では、現金のやり取りで発生する現金の確認、お釣りを渡すという作業が不要です。 また、スタッフのミスによるレジ金の誤差を防げることもできます。さらに、キャッシュレス決済端末がPOSレジと連動していれば金額などの二度打ちも不要となります。

2つ目は現金決済のコスト削減です。現金決済インフラとはATMの設置・運営などのことで、これらの維持・管理にはコストがかかります。 現金決済インフラには、年間約1.6兆円を超える費用がかかっています(出典:経済産業省「キャッシュレスの現状及び意義」(2020年1月))。 キャッシュレス化を進めることで、現金決済インフラの費用の削減が可能となります。

3つ目はインバウンド客による消費拡大です。大手旅行代理店の2024年の予測では、インバウンド客は3,310万人となり、対前年131%、対2019年103%となることが予想されています。消費額は政府が目標として掲げている通年5兆円を突破できる見込みです。現金を多額に持ってこないインバウンド客も多くいます。インバウンド客の声としてキャッシュレス化がもっと進んでいたなら、もっと消費したという声があります。インバウンド客の利便性向上と消費額を増やすためにもキャッシュレス化の拡大が必要となります。

海外主要国をみると、米国、フランス50%以上、英国、シンガポール、カナダ60%以上、オーストラリア70%以上、中国80%以上、韓国90%以上とキャッシュレス化が進んでいます。なかでも中国ではQRコード決済のアリペイやウイーチャットペイが単なる決済アプリから生活アプリとなり、銀行関連手続き、食の安全問題、タクシー難民、前払い方式の医療の課題を克服し、モバイル決済を利用した生活のイノベーションを生み出しています。

世界に視野を広げると、支払サービス事業者の中には、利用を増やし、その結果として集まる支払情報を蓄積・分析することで新たなサービスを創造するビジネスモデルも誕生しています。このような国際潮流に遅れないためにも、日本においてもキャッシュレスというデジタル化を推進していく必要があると思われます。将来的には世界最高水準のキャッシュレス化比率80%以上を目指す日本において20年後に新紙幣が発行されるのか、或いはデジタル通貨となるのか注目していきたいと思います。

田邊 勝彦 2024年08月10日