2024年11月25日
人生100歳時代!教育訓練給付金の拡充は家計の強い味方となるか
令和6年度の雇用保険法改正により、2024年10月1日以降に受講を開始する教育訓練に対しての給付率が10%引き上げられました。
今回の制度拡充は“人生100歳時代”に合わせたキャリアプランをお考えのシニア世代にとって、家計への見方となりそうです。
本コラムでは、制度の基本を含め、今回の改正点を見て行きましょう。
1.教育訓練給付金とは
教育訓練給付金とは、1998年に失業等給付の一つとして雇用保険制度の中に設けられた公的支援制度です。
給付申請が出来る主な条件は「現在雇用保険に3年以上加入している」もしくは「離職後1年以内で、雇用保険に3年以上加入していた」ですが、詳しくはハローワークにて「教育訓練給付金支給要件照会」を行うことが望ましいですね。
2.令和6年度の改正のポイント
「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の3種類があり、それぞれ目的と給付額が異なります。
専門実践教育訓練給付金は、2024年9月30日までの受講開始に対しては、教育訓練経費の50%(年間上限額40万円)が受講開始日から6か月ごとに支給され、また、訓練時並びに終了後の就業状況などの要件を満たすと追加で教育訓練経費の20%(年間上限額16万円)が給付されます。
2024年10月1日以降の受講開始に対しては、訓練終了後の賃金が受講開始前賃金より5%以上上昇した場合には、さらに教育訓練経費の10%(年間上限額8万円)が追加給付されることとなりました。
特定一般教育訓練給付金は、従来の、教育訓練経費の40%(年間上限額20万円)に、教育訓練経費の10%(年間上限額5万円)が追加給付されることとなりました。
一般教育訓練給付金は、受講費用の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給されます。今回の改正の対象にはなっていません。
3.事例で見てみましょう
「専門実践教育訓練」の給付を分かりやすく、事例を示して説明しましょう。
(事例) 社会福祉施設に正社員としてお勤めのAさんは、社会福祉士の資格講座を受講しました。
訓練期間は1年間で、年間授業料は80万円。前期・後期の6か月ごとに40万円を納付します。
現在のAさんの給与所得は年間400万円(総支給額)ですが、社会福祉士の資格取得後は管理職に昇進し、給与は430万円となる見込みです。
4.制度利用時の留意事項
教育訓練給付金制度をお考えになる際に、ご留意頂きたい点は以下の4点です。
①給付金は事後給付です。
入学時に係る費用は、事前にご準備頂く必要があります。
②期の途中で受講を止めた場合は、止めた期の給付はありません。
また、修了後1年以内の就職などの要件が満たせなかった場合も追加給付はありません。
③専門実践教育訓練給付金及び特定一般教育訓練に際しては、申請時に訓練対応キャリアコンサルタントのキャリアコンサルタントを受け所定の期日までにご自身の住所を管轄するハローワークで手続きを行う必要があります。
④昇給後に受講開始となった場合、または受講終了後に5%以上の賃金上昇とならなかった場合には追加給付はありません。
リスキリングに際しての「家計の強い味方」にするためにも、制度利用時には留意事項を意識し、キャッシュアウト、キャッシュインのタイミングを考慮した資金計画を考えることが大切です。
荒井 正巳 2024年11月25日