家庭経済の耳寄り情報

2025年05月10日

マンションの大規模修繕工事にからむ問題

 最近のニュースで、大規模修繕工事で複数の業者が談合を行っていて公正取引委員会から独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を受けたと報じられています。

 マンション管理会社には、壁材、空調、ポンプ、屋上防水、エレベーター等提携業者があり、大規模修繕工事に他の業者が参入しづらいと言われ、以前より修繕費の高止まりが指摘されていました。一般的に大規模修繕工事は、官公庁の入札と同じような形をとることが多く、区分所有者の修繕積立金が一種の予算のように扱われ、決してリーズナブルとはなっていません。

マンションの大規模修繕施工会社の決定方法について、以下のようなケースが考えられます。
① 理事会で修繕項目を検討し、管理会社や設計監理会社と協議して、施工会社を選定して各施工会社に見積もりを出してもらい一番安い業者を選定する。
② 1Fフロント、その他共有部、屋上等工区別に、施工会社を入札で選定する。
③ 建築時にマンションを施工した会社を選定する。管理組合が他の施工会社と合い見積もりを取らないと約束し、その会社からリーズナブルな価格を引き出す。(競争入札はしない)

 あるマンションでは、設計図書を作成し、補修個所や構造を熟知していて、第1回目の大規模修繕工事では建築時に施工した会社を選定することが多いという結果を踏まえて③の方法を採用しました。

 ここで、修繕積立金について見ていきたいと思います。
マンションの分譲段階では、事業者が、購入者は、物件の取得費と管理費や修繕積立金の合計額の負担を少なくするために、長期修繕計画と修繕積立金の最初設定された月額が著しく低く設定されているケースが多いです。

 国土交通省が令和6年6月に改定した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安」(機械式駐車場除く)の20階以上の月額の占有面積当たりの修繕積立金額は240円~410円/㎡・月(事例の3分の2が包含される幅)、平均値は338円/㎡・月となっています。

出典:国土交通省「修繕積立金に関するガイドライン 7ページ 修繕積立金の額の目安について」
   https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf

 このマンションは、竣工年数16年で区分所有者が現行264円/㎡・月の修繕積立金を負担していますが、今後の計画修繕において資金不足が見込まれているため、昨年度の総会で資金不足の段階的な改善に向けて以下の修繕積立金の見直しを提案しました。

 「2025年度分から350円/㎡・月、2026年度分から400円/㎡・月の改定」

 マンションの収入増のために駐車場の値上げや今後の計画修繕及び資金状況の各項目について、議論がなされ、区分所有者に対して丁寧な説明が足りないという意見が出て、審議取り止めとなりました。そのため、修繕積立金の値上げを先送りすることとなり綱渡りの状況が続いています。
そこで、今後、管理会社から長期修繕計画書が提出され次第、資金計画を理事会で検討し修繕積立金の値上げを再検討することとなりました。
新年度に入り、理事会では来年度の総会で再度、修繕積立金の改定を提案すべく、討議を始めています。具体的には耐用年数を考慮に入れ、先延ばし可能な工事や不必要な案件を洗い出し次回の大規模修繕時期の収支を見直す作業に入っています。

新たにマンションを購入しようと検討されている方や現在、マンションを所有されている区分所有者の方は、大規模修繕計画や修繕積立金について、十分調べてください!

竹内 学 2025年05月10日