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2025年09月25日

粒子線がん治療に保険適用拡大

がんの放射線治療で陽子線や重粒子線を使う治療が広がっています。従来のX線よりもがんを狙い打ちにするため副作用が少なく、治療効果も高いです。

がんの3大治療は手術、放射線治療、抗がん剤治療です。このうち、放射線治療はがん細胞に放射線を照射することでダメージを与え、治療を行おうとするものです。しかしながら、正常細胞に放射線があたるとその正常細胞もダメージを受けてしまうため、いかにがん細胞だけにピンポイントで照射できるか工夫がされてきました。
放射線治療で使用される放射線は、X線やガンマ線などが一般的ですが、これらを体の外から照射すると、体の表面で最もエネルギーが高まり、体内に進むに従って力が弱まってしまう弱点がありました。そうした弱点を補うために開発されたのが粒子線治療(陽子線治療、重粒子線治療)です。

(陽子線治療とは)
粒子線のひとつ、陽子線を使った放射線治療です。陽子線は線量の集中がよく、通常のX線の1.1倍のエネルギー量を持っています。頭蓋底腫瘍、頭頸部がん、肺がん、肝細胞がん、前立腺がん、小児がんなどで臨床使用されています。
(重粒子線治療とは)
粒子線の中で、陽子線よりもさらに重い重粒子線を利用した放射線治療です。治療では炭素イオン線が使われています。重粒子(炭素イオン)線を光の速度の約70%まで加速させて、体の内部のがんに照射します。

QST病院(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)のHPより

QST病院(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)のHPより

(粒子線治療のできる治療施設)
ちなみに、陽子線治療施設は全国で22か所、重粒子線治療施設は全国で6か所となります。

(粒子線治療と保険適用)
粒子線治療はこれまで公的保険の適用になっておらず、臨床試験、または先進医療として行われてきました。先進医療として治療を受けた場合の患者自己負担額は、陽子線治療が約276万円、重粒子線治療は約315万円という高額な費用がかかりました。
2018年4月、これら粒子線治療が前立腺がんなど一部のがんで、保険診療となりました。小児がんなどが2016年に先行して保険適用となっていましたが、今回、新たに前立腺がんや頭頚部がんが保険診療として認められたのです。
2024年6月より早期の肺がん等3種類が公的医療保険の適用に加わり、重粒子線で治療できるがんが増えてきています。今後とも保険適用の拡大に注目したいと思います。

佐藤 博信 2025年09月25日