2025年10月10日
『金は守りの資産となりえるか』
金の国内価格が9月29日時点で、初めて1グラム2万円を突破しました。指標になる地金商最大手の田中貴金属工業が当日午前中に公表した小売価格(税込み)は1グラム2万18円となり、前週末比78円高で最高値となりました。
また、国際価格の指標となるニューヨーク先物(中心限月)でも、9月23日時点で1トロイオンス(約31.1グラム)が初めて3800ドル台に達しました。
金価格上昇の背景
地政学リスク
トランプ大統領による理事解任通告等のFRBへの介入による独立性への不安やドルへの信頼感の低下があります。また、国連の対イラン制裁の復活、ウクライナ情勢、パレスチナ情勢等の世界のきな臭い動きが上げられます。
ドル本位制への不安
世界の中央銀行による金の保有量が増え続けています。
歴史的にはそれぞれの国が自国通貨の価値を金で裏付けた「金本位制」が確立したのは1816年の英貨幣法にたどり着きます。その後、1944年に第二次世界大戦後の国際的な通貨枠組みを考えたブレトンウッズ体制が構築されて、ドルを金と交換できる「金・ドル本位制」へと移行しました。
金とドルの交換を停止した1971年のニクソン・ショックを経て金の裏付けをしない「ドル本位制」へとなりました。
1985年には日米欧の主要国がドル高是正で協調したプラザ合意がなされて、金を売りドルに換える動きが各国の中央銀行の常態化となりました。
この動きに変化が出てきています。ドルへの不信の高まりです。関税による貿易戦争を叫び、政府債務を顧みず、地政学不安をあおるトランプ米政府の行動に世界の中央銀行が背を向け始めています。
ワールド・ゴールド・カウンシル等によると各国の中央銀行の金保有量は、ブレトンウッズ体制下の1965年の3万7千トン台に戻っているようです。また2023年以降、1000トンを超える大量の購入となっています。世界の中央銀行の準備資産も金の比率が2024年にはユーロを上回り、米ドルに次ぐ資産となっています。
金投資のメリット
・世界共通の価値:通貨や国境に左右されず、世界中で価値が認められています。
・分散投資に最適:株式や債券と異なる値動きをするため、ポートフォリオの安定化に有効です。
・インフレ耐性:物価が上昇しても、金はその価値を保ちやすいです。
金投資のリスクと注意点
・利息と配当が無い:株式や債券と違い、保有していても収益は生みません。
・価格変動リスク:短期的には大きく上下する可能性があり、タイミングによっては損失を被ることもあります。
・保管と管理の課題:現物を保有する場合、盗難や保管のコストがかかるリスクがあります。
金投資の方法と特徴
ポートフォリオの検討
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオをモデルにした国内株25%、海外株式25%、国内債券25%、海外債券25%の配分のうち、国内債券配分を18%に金の配分を17%に振りむけてみるのも一つの考えではないでしょうか。
まとめ
過去5年間で金価格は約2.5倍に上昇しました。米国の経済政策、金融政策の変更、米国金利の利下げ、今後も続く地政学リスクやインフレ懸念が続く情勢の中で、金の需要は堅調に推移すると考えられています。金は守りの資産になるのではないでしょうか。
金井 剛 2025年10月10日