家庭経済の耳寄り情報

2025年10月25日

住宅ローンの団信(団体信用保険)について

2024年に日本銀行がゼロ金利解除したことにより、金利のある世界へ移行しています。住宅ローン金利も上がる傾向にあります。
三井住友トラスト・資産のミライ研究所での毎年のアンケートによれば、変動金利の比率は2023年6割超が2024年には5割に減少しているとのこと。一方、固定金利について長期の固定金利を選択する割合が増えているそうです。(Kinzai Financial Plan2025/7~)
 そこで、全期間固定金利の代表格たるフラット35の住宅ローンの団信(団体信用生命保険、以後団信といたします)を中心に保障内容の確認をしたいと思います。
 団信とは、お客様に万一の時、保険金が債務に充当され、以後の住宅ローンの返済が不要となる保険です。(資料 小冊子 2025年4月版フラット35住宅ローンのご案内「買取型」に基づいています。住宅金融支援機構 以下文章はすべて同様です)
 死亡や高度障害保障から、働けない状態になった場合の不安が、深まっています。返済できない状態の恐怖は、大変です。大きな借金を抱え不測の事態をどう避けるか、まさにリスク管理が必要です。
 けがや病気で働けなくて返済不能の場合、住宅ローンの返済が無くなれば、希望があり得ます。どうすればよいか?検討いたしましょう。まずは、フラット35の団信は?

①新機構団信(H29/10以降)
死亡または、病気・けが(身体障害1級・2級に該当、身体障害者福祉法に定める1級・2級に該当し身体障害手帳の交付を受けたとき
*身体障害認定者総数(1級・2級)約216万人 令和5年度福祉行政報告例(厚労省)
H29/9までは、高度障害保障であったが、身体障害保障となった。高度障害保障では支払い対象だが身体障害保障では支払い対象とならものもあります。例えば、言語またはそしゃく機能を全く永久に失ったもの等。

②新3大疾病付機構団信(H29/10以降)新機構団信借入金利+0.24%
死亡、3大疾病、身体障害保障(新機構団信に同じ)、新たに介護保障が追加されました。

1.がん 所定の悪性新生物に罹患したと医師が診断確定したとき
2.急性心筋梗塞 
イ)初めて医師の診療を受けた日を含め60日以上の労働の制限を必要とする状態が継続したと医師が診断
ロ)治療を直接の目的として病院または診療所で所定の手術を受けたとき
3.脳卒中
イ)初めて医師の診療を受けた日を含め60日以上、言語障害、運動失調、麻痺などの他覚的な神経学的後遺症が継続したと医師が診断
ロ)治療を直接の目的として、病院または診療所において所定の手術を受けたとき  

 注意すべきは、急性心筋梗塞や脳卒中でロ)の所定の手術に該当すれば、保障されるということでハードルは下がっています。民間金融機関では、この条項がない場合があります。

介護保障
・公的介護保険制度による要介護認定、要介護2級以上と認定
・所定の要介護状態に該当しその日を含めて180日以上要介護状態の継続したことの医師の診断確定

民間金融機関の団信で要介護2級以上での保障は少ない。そもそも介護で全額弁済の例は少ないです。このことは、フラット35の団信は民間に比べ、介護2級以上の対応は、魅力的であります。

民間のY銀行とM銀行の住宅ローンの団信を少し見ます。(HPを参照)
Y銀行は、8大疾病保障特約付き団信の場合、脳卒中・急性心筋梗塞の場合、*1所定の状態が60日以上継続のみで、手術や入院では不可です。また、糖尿病・高血圧症・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎で*2就業不能状態が12か月超継続ということで、ハードルはかなり高く感じます。
1所定の状態とは、急性心筋梗塞(労働制限を必要とする状態が継続)、脳卒中(言語障害、運動失調、麻痺等の他覚的な神経学的後遺症が継続)
*2就業不能状態とは、本人の経験・能力に応じたいかなる業務にも全く従事できない。

民間のM銀行は、4つのプランがあり、7大病型、全疾病型、保険料支払型は、100%で、団信により債務残高はゼロになります。
7大疾病100%,住宅ローン金利+0.3% 脳卒中・急性心筋梗塞で入院
高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変で就業障害が1年30日を超えて継続。
 ・全疾病100% 住宅ローン金利+0.5% すべての病気・ケガの保障、条件は、上記に同じです。
 ・保険料支払型 7大疾病 就業障害が1年30日を超えて継続 保険料別払

ペア―ローンとデュエット(ペア連生団信)の違い

フラット35については、もともとデュエット(夫婦で連帯債務となる場合)は、ペア連生団信の加入ができます。これは、加入されたどちらかに万一のことがあった場合は、全てのフラット35の債務の返済が不要となります。ただし、新3大疾病付機構団信は利用できません。これは痛い!!
 ペア―ローンは、1つの物件に対して、ご夫婦等などがそれぞれ単独で借り入れ申し込みを行い、2つのフラット35を合わせて利用できる制度です。メリットとして、異なる借入期間やそれぞれ団信に加入ができます。当然、各々が新3大疾病付機構団信に加入できます。残念なのは、連生団信はありません。
 民間の金融機関では、ペア―ローンで連生団信を扱うところが増えています。ただし、死亡と高度障害のみで、3大疾病や介護保障は含まれているケースは稀です。
 そもそもペア―ローンは、リスクが多いと指摘されています。パワーカップルが東京23区にある1億以上の新築・中古マンションをペアローンで購入するケースが増えているそうです。
 失業や降格、転職による給与の減額または離婚など不測の事態があれば、間違いなく破綻の可能性があります。
 フラット35の「ご注意」によれば、「一方のお客様が返済を怠ったとき、債務について一括返済を求められることとなった場合は、もう一方のお客様も、ご自身の債務について一括返済を求められることになります。」とあります。フラット35では、互いの契約の連帯保証人とはなりませんが、民間金融機関では互いの契約の連帯保証人となる場合が多いようです。
 いずれにしろ、住宅ローンを借りる場合、大きな買いもですから、今の課題を明確にし、将来の収支を考え、具体的に数値でシミュレーションし教育費や老後の資金等を考慮し破綻が起こらないようにどうすればよいか検討しましょう。

 今回は、住宅ローンを借りて、夢のマイホームを取得しても、けがや病気などで不測の事態が起き返済ができなくなる場合があります。そのリスクを少しでも事前に回避できれば、ということで団信を取り上げました。各金融機関により保障内容が異なりしっかり把握された方が良いと思います。
 神奈川県FP協同組合では、相談やライフプラン作成のお手伝いができます。住宅購入や住宅ローンの選び方などを考えた場合、まずライフプランを作成し、現状分析と問題点の発見、将来の家計の展望を数値で検討する。
 間違いのない安全・安心な住宅・住宅ローンの選択をしませんか!!

佐藤 博明 2025年10月25日