家庭経済の耳寄り情報

2012年01月21日

老齢年金の給付減額は?

老齢年金の給付減額は?

年金の給付減額が平成16年の年金改定で決められて以降、老後に不安を感じて相談に来られるお客様が増えています。FPはお客様のライフプランづくりがメインワークですが、「年金額が将来どの程度減るのか」を心配されるお客様に対する私なりの年金額の算定方法をご披露します。ご参考にしてください。

(右表はクリックすると拡大します ⇒)

まず平成11年の年金改定で将来老齢厚生年金が5%減額される(適正化という言葉が使われていますが)ことが決められました。現在は3通りの計算方法の内、一番高い金額が支給されるため減額はまだ実現していません。

次に平成16年の年金改定で「完全物価スライド制」から「マクロ経済スライド」に移行し、老齢基礎年金では物価上昇率からスライド調整率(原則0.9%)が引かれることになりました。これは少子高齢化の進展や働く人の賃金水準の動向を反映させるものです。
目標達成時期である平成35年頃まで残り12年、上記の改定率はインフレを前提としたものですが、昨今のデフレ下でも減額できるように制度改定がされると思われます。現制度の趣旨からは最大で10.8%(=0.9%×12年)減額されると考えることができます。

もう一つ、現在実際に支給されている年金水準(特例水準という)は平成16年改定で法律が規定する本来の年金水準(本来水準という)より2.5%高く、この修正(年金減額)が必要とされています。昨年11月に実施された行政刷新会議でこの問題が指摘され、小宮山厚労相は12年度から3年間で引下げに取組む考えを表明しました。上述の10.8%に2.5%を加えた13.3%が今後引き下げられる当面の最大値であると考えられます。

国が発表した平成23年度年金額は右上表の通り月額231,648円(前年比マイナス0.4%)です。
 (厚生労働省 報道発表資料)
12年間で老齢基礎年金が最大13.3%減額され、老齢厚生年金が5%減額されると12年後は右上表のように合計209,152円に減額されます。夫婦の老齢年金額は合計で平成23年比マイナス9.7%、12年間の平均年間減少率は約0.8%です。  


 年金給付減額はこれで止まるのでしょうか?平成21年の年金財政検証では給付減額の歯止めを現役平均賃金(358,000円)の50%とし、給付減額の終息時期~つまり年金の財政均衡時期の目標を平成50年としています。これはあくまでも厚生労働省年金局の財政検証結果レポートですが、もしこれが実現すると27年後の年金額は179,000円となり、27年間の減額率は年平均マイナス0.84%です。

 私がライフプランで老齢年金の減額を算定する時は年間減少率0.8%を使用し、当面20年間としています。老齢年金の受給月額約23万円の0.8%は1,853円、年間で2.2万円の減額です。皆さんはどうとらえるでしょうか?「毎月1900円だけか、何とかなる」と考えるか、「毎年2.2万円も減るのか、大変だ」と思うか。個人差は大きいと思いますが、数値化することで具体的に見えてくる~不安は軽くなり、対策を考える余裕が生まれると思います。国は自己責任時代と言っています。早目にライフプランを作り、老後資金の準備目標を定め対策を打つことをお奨めします。

仁科 眞雄  2012年01月20日