2012年05月10日
住宅購入計画 ~想定外のことが起きたら対処できますか?~
近頃、電車から見える景色に新しいマンションや、新築一戸建てがこのところ増えたように感じます。それとともに、住宅関連の駆け込み相談が増えています。
住宅購入は人生の中でもわくわくする出来事のひとつです。
相談者の中で気になるのが、資金計画を事前に立てず、まず物件に魅せられ、すぐ買いたいと夢中になってしまう方。
また、家賃と変わらないから、住宅ローン金利の低い今だから、将来消費税のアップもあるから、と不動産会社からの情報で、契約を急がされる方。
これらは若い方に多く見られます。
住宅は大きな買い物ですから、物件価格、諸経費、ローン金利、返済期間、収入に占める返済額の割合、今後の収入の安定性、教育費とのバランスなどを考慮しなければならず、事前のきちんとした計画無しでGOできるものではありません。
今回の東日本大震災の時、津波や、原発の破壊の後、想定外という言葉がニュースで毎日のように流れました。
住宅購入計画でも、想定外のことが起きたら対処できますか?
まずは考えられるリスクを洗い出し、起こる頻度、危険度と対策を考えておきましょう。
発生リスク 危険度 頻度 問題点 対策
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会社倒産 高 低 収入0により返済不能 住宅売却
(売却価格と住宅ローン残債の差)
リストラ 高 中 転職までの期間が長期に 失業信用費用保険
わたる可能性あり
(保障期間、取り扱い会社が限定的)
転職 中 中 転職後の収入減 仕事での力を付ける
病気、ケガ 中 中 長期入院による治療費の負担 医療、ガン、所得保障保険
収入減 家計の見直し
火災 高 低 住宅全焼、延焼、消火活動での 火災保険の中身の確認
被害等、保険の内容により
出ないケースあり
地震 高 中 大規模地震の場合の給付削減 地震保険の確認
教育費の準備 中 中 家計の赤字、生活の厳しさ 計画的な貯蓄、優位な学資保険
不足
債務者死亡 高 低 収入0により今後の生活の不安定 団信生命保険
債務者の転勤 中 高 住宅ローン減税が受けられない ローン減税の知識
ローン金利の 高 中 返済額アップによる家計負担増 無理のない借り入れ計画
上昇 頭金の準備
(変動、固定選択型金利) 住宅ローンの仕組みの知識
欠陥住宅 中 低 耐震偽装、雨漏れ、水周りの欠陥 不動産業者、工務店の選択
離婚 高 中 支払い負担厳しい 夫婦の協力、コミュニケーション
相手への理解
代表的なリスクを挙げましたが、この他にも色々なリスクがあります。
リーマンショック後リストラや、ボーナスカット、残業代カット等の収入減により、住宅ローン破綻が激増しました。
住宅ローン返済が困難になった人から返済の先延ばしなどの条件変更の申し出があった場合は、申し出に応じるよう金融機関に努力義務を課した金融円滑化法案が施行されました。 (景気対策の1つ 2013年3月までの時限立法)
金融庁の調査では2011年9月現在全国の金融機関に返済先延ばし申し込みが約21万8000件あり、実行された件数が17万件ということです。
ただし、この措置は一時的に返済額は減らせても、総返済額は増え問題の先送りとなるだけで、将来的に返済不能や破綻になる可能性が高いといえます。
住宅ローンを借りる場合、35年、30年と長期にわたります。人生の中でどんなことが起こるかはわかりませんが、住宅を購入するということは、夢の実現だけではありません。大きなリスクも背負い込むという現実を冷静に考えて欲しいと思います。
住宅を購入する前に、いくつもの物件を沢山見てください。
住宅に対する目を養うとインテリアの美しさや設備の豪華さ、空間の広さでなく、構造や暮らしにあった利便性、子育てのしやすさ、働きやすさ等、住宅の本質が見えてきます。
失敗のない住宅購入計画を、時間をかけて楽しみながら実践して欲しいと願います。
佐藤 房子 2012年05月10日