家庭経済の耳寄り情報

2012年09月10日

消費増税!住宅購入への影響は?

消費増税!住宅購入への影響は?

消費増税案が8月上旬に条件付きで可決されました。原案は2014年4月から3%アップして8%へ、2015年10月から更に2%アップで10%になるというものです。新聞報道では住宅展示場への来場者が大幅に増加しているそうです。私も「住宅購入を考える~消費増税の影響は?」というタイトルのセミナーを住宅展示場から依頼されました。

前回の消費増税は15年前に橋本内閣が実施した1997年4月からの2%アップ(現行の5%へ)です。国は住宅需要の減退を心配し、住宅ローン減税の拡充策を打ちだしましたが、消費増税の前年1996年は163万軒と前年比1割増、駆け込みがあったと推定されます。1997年は134万軒に2割近く減少、以降景気低迷もあり120万軒の低水準が続いています。尚、2007年にはサブプライム問題、2008年はリーマンショック等世界的な景気低迷で住宅着工件数は2009年以降約80万軒と極めて低い水準になりました(グラフ参照~国土交通省データより作成)。

消費増税による住宅購入への影響額は、土地には消費税はかかりませんので、建物代が2,000万円とすると40万円です。この増額分を借入金に依存するとした場合、金利支払額や保証料・団信保険料等の増加による総負担額は約1.6倍、上の例では64万円の負担増になります。もう一つ、1996年10月末までに建築の契約を結んだ住宅には旧税率が適用されました。消費増税が開始される前、半年以内の契約には新税率が適用された点に留意をして下さい。今回もこれが適用される可能性は高いと思われますので、消費増税を避けるためには2013年9月までに契約をする必要がありそうです。

今回の影響額を試算してみましょう。住宅金融支援機構の2011年度調査データでは土地付注文住宅の建築費は2,238万円、住宅ローン総額は3,739万円(全国平均値)です。消費税3%アップの負担増は67万円、総負担額は108万円(消費増税額の1.6倍)です。同様に消費税5%アップの負担増は112万円、総負担額は180万円(同上)です。これだけ見ると大きな影響ですが、前回同様に「住宅対策」が打たれると思われます。住宅の減税対策として住宅ローン残高の2%にすることや減税期間を15年にする等も検討されていますし、住宅エコポイントやフラット35の特定金利等も検討されていますので、消費増税による負担増はないと言って良いでしょう。


私が心配するのは消費増税に関係なく地道にしっかり住宅購入を検討しているお客様への影響です。一般的に消費増税を避けたい人は多く、駆け込み購入があると想像されます。今回でいうと、来年9月までに契約を結んで10月ごろ着工する人が増えるということでしょうか。駆け込み的にこの動きが顕著になるのは、確たる根拠はありませんが消費者心理を考えると、来年初めから春以降と想像されます。

そうなると2013年からハウスメーカーや工務店は大変忙しくなります。売り手市場と言って良いかもしれません。忙しくなり、建築プランを何度も時間をかけて検討してくれるでしょうか、見積金額も売る側が強気で高くならないでしょうか。現在、住宅購入を真剣に検討しようとされているお客様はこの動きが顕著になる前に、なるべく早く手掛けることをお奨めします。

もう一点、住宅購入者に消費増税より大きな影響を与える問題があります。それは住宅ローンの金利です。1995年以降、低金利が長く続いているので、金利のことが忘れられがちですが、住宅ローンの借入平均値3,739万円(上記住宅金融支援機構の調査データ)で金利が1%違うと総支払額は842万円も違います。返済期間35年・固定金利2%とすると支払総額は5,202万円、固定金利3%とすると6,044万円も支払わなければなりません。

政府の長期金利予測(2009年経済財政諮問会議資料、世界経済低迷のケース)では今後2015年頃には0.5%アップ、2018年頃には今より1.0%アップするとされています。僅か0.1~0.2%アップでも84~168万円、消費増税並みの負担増です。消費増税に踊らされるより、金利の動向に目を光らせる方が大切だということが分りますね。
この視点からも早く手掛けることをお奨めしたいと思います。


住宅購入は一生で一番大きな買物と言われます。良い家づくりには最低でも2~3社を選択し、住宅プランと見積書を出して貰い比較検討することが大切です。1980年頃までは3軒新築しないと良い家はできないと言われていました。今は情報化社会、建築会社も研究が進みそんなことはないと思いますが、「競争の中から良いものが生まれる」ということは眞理だと思います。具体的に検討を始めて契約するまでには半年前後かかると考えて、セカンドオピニオンを参考にしつつ、子どもや孫も住み続けたいと想う良い家づくりを念願してやみません。

仁科 眞雄 2012年09月10日