2012年09月20日
税制改正を踏まえた遺言その他の注意点
社会保障・税一体改革の中で、現在消費税ばかりが取りざたされていますが、消費税率が10%になる2015年をめどに、相続税法の改正が行われるものと思われます。もともと、東日本大震災が無ければ、2011年より実施されていたはずの改正です。また、消費税UPだけでは、政府は財政難を乗り切れません。相続税増税は必ずやってきます。
そこでいざというときに対処するためいくつかの注意点についてご案内します。
① 遺言における注意点・・・・税金がかかることを想定する。
税制改正がいつになるかは決まっていません。しかし遺言が執行され、相続が行われるのは被相続人が亡くなった後です。それは5年後か10年後か?
そのとき改正がなされていることを踏まえ、これまで相続税がかからないと思われていた方でも、税金がかかることを想定して遺言を残す必要があります。
「例えば、夫が無くなり、妻と子2人の計3人で相続の場合」
現行制度では
基礎控除5,000万円+1,000万円×法定相続人の数=8,000万までが非課税なのに対し
改正案では
基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数=4,800万までとなります。
その他、小規模宅地の特例の見直しや、死亡保険の非課税枠の見直し等により特に都心などでは大きく影響を受けることになります。
そのため、遺言においては極力余計な税金のかからないよう配慮する必要があります。
具体例では
・介護をしてくれた次男の嫁にも遺産を残したい、という場合、単に遺贈をしてしまうと法定相続人以外への相続で、税金が2割加算されてしまいます。
*次男に多めに残すように遺言するか、もしくは次男の嫁を養子にするなどの配慮が望ましいと思われます。
又、相続税は、相続人の連帯債務となりますので、兄弟の一人が払わなくても、他の兄弟が支払いをせざるを得なくなります。それぞれの状況を踏まえ遺言を残す必要が生じます。
② 小規模宅地の特例に注意・・・・既に先行で改正
最大80%もの評価減を受けられる「小規模宅地の特例」で持ち家の人は大きな恩恵を受けて来ましたが2010年度に改正され、一足早い増税となっています。
*適用要件が厳しくなっています。
自宅に同居し、且つ持ち家が無い該当者のみ減額を受けることが出来るとされ、相続人の多くが対象外となっています。
(居住継続・事業継続・所有継続・持ち家無しが要件)
③ 相続時清算課税制度にも注意・・・・・税金がかからなければメリット
2,500万までの贈与が非課税とされますが、相続発生時に相続財産と合算で相続税が算出されるため、改正により基礎控除が減額されると一挙に相続税のかかる可能性が高まります。
算出額は、贈与時の評価で決まるため、不動産や株などで、相続時に評価額が下がっていると大きな損失の可能性があります。
※税制改正を踏まえた遺言作成時等の注意点について述べましたが、せっかく考えたことがきちんと相続人に伝わらなければ意味がありません。
意思を明確に伝えることによって争いの無い相続をめざすことができます。
そのため「付言事項」の記載に工夫が必要です。
・寄与分制度への配慮・・・・・感謝の気持ちをこめて
・特別受益制度への配慮・・・・生前贈与を明確に
・遺留分制度に配慮・・・・・・最低保証はきちんと
・代襲相続制度に配慮・・・・・兄弟同士なら理解しあえることも孫までは伝わらない。
これらの要件をしっかり入れた付言の記載強化によって、相続税その他の様々な状況に配慮した被相続人の気持ちが相続人に伝わると共に、争いの無い相続が実現できると思われます。
山口 貴之 2012年09月20日