2012年09月30日
社会保障・税の一体改革 ~年金の主要な仕組みを見直し、給付の充実を図る~
ご存知の通り、大もめの末、本年8月、消費税の増税が決まりました。現行5%が2014年(H26)4月から8%に、15年(H27)10月以降は10%に引き上げられる見通しになりました。
併せて社会保障・税の一体改革において年金の改正も決まりました。今回の改正は、大小数多くありますが、重要な仕組みの部分が改正され、給付面ではかなり充実した内容になっています。
では、今回改正の主要なもの4点を、消費税の増税時期と合わせ時系列的にみていきましょう。
1、2014年4月、消費税8%の時期に合わせ、父子家庭にも遺族基礎年金が支給されることになります。
現行では、遺族基礎年金の支給対象は「子のある妻」又は「子」ですが、「子のある配偶者」又は「子」となり、いままで支給されなかった「子のある夫」にも支給されることになります。
遺族給付は、これ以外にも男女差(国民年金の寡婦年金、遺族厚生年金の中高齢寡婦加算、遺族厚生年金の夫のみの年齢制限等)がありますが、社会実態等を見ながら、引き続き検討することになっています。
2、2015年10月、消費税10%の時期に合わせ、次の2つの改正が実施されます。
(1)年金の受給資格期間を現行25年から10年に短縮することになります。
対象となる年金は、老齢基礎年金、老齢厚生年金、退職共済年金、国民年金の寡婦年金です。
これにより、無年金者(25年未満の者)42万人のうち41%にあたる加入期間10年以上25年未満の約17万人が有資格者となります。
また、残り59%の10年未満の者約25万人については、本年10月から実施される国民年金保険料の後納制度(保険料の納付可能期間2年間を10年に延長する:~2015年9月末までの3年間時限措置)の活用が可能であれば、有資格者になることができます。
(2) 会社員の厚生年金と公務員の共済年金の保険料を統一し、制度を一元化することが決まりました。
一元化は、以前からの懸案事項でしたが、やっと実現する運びになりました。
2つの年金は制度的な差異がありますが、基本的には厚生年金に揃えることになります。
また、共済年金には厚生年金にはない公的年金の3階部分(職域部分)があり、厚生年金より約20%多い受給金額となっていましたが、一元化に伴い廃止されることになります。しかし、いきなり廃止では今まで保険料を支払ってきた方に不都合が生じますので、何らかの経過措置が検討されることになっています。
3、消費税10%実施1年後、2016年(H28)10月には、短時間労働者に対する厚生年金、健康保険の適用が拡大されることになります。
これも、以前から検討されてきましたが、外食産業やスーパーなど流通産業では数多くの短時間労働者を雇用しており、実施されると社会保険料の企業負担が増えるということで反対があり実現が遅れていましたが、いよいよ実施の運びとなりました。
今回は対象者数を約25万人にした案を中心に検討されることになっています。
現行は週30時間以上の方が厚生年金の被保険者となっていますが、これを ①週20 時間以上、②月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)、③勤務期間1年以上、④学生は適用除外、⑤従業員501人以上の企業に勤務する方を適用要件とする案をベースに3年以内に検討を加え実施することになっています。
なお、年金、医療、介護などの社会保障制度の抜本的な見直しは、今後設置される「社会保障制度改革国民会議」で検討されることになっています。
三好 勝 2012年09月30日