2013年01月20日
ついにやって来る!年金減額 ~年金減額法案成立~
昨年末の国政のドタバタ解散・総選挙の陰で目立たなかったのですが、年金減額法案が成立したことご存知でしょうか?
年金減額法案とは、過去の物価下落時に年金の受給額を据え置いたため、現在は本来の水準よりも払い過ぎになっており、それを解消するためのものです。
年金受給額は物価に連動して決まります。物価が上がれば年金額が上がり、物価が下がれば年金額が下がる物価スライド方式ですが、2000~2002年に物価が下落したにもかかわらず、当時の自公政権が景気への影響と年金生活者への配慮により特例で据え置いたことで、現在は本来よりも2.5%高くなっています。この2.5%を2013年10月に1%、2014年4月に1%、2015年4月に0.5%と3段階で引き下げ、本来の水準に戻すものです。
これにより、受給額は次のように減っていきます。
まず国民年金(満額の場合の年額値)では
2012年度 78万6500円
2013年10月 77万8500円(▲8,000円)
2014年4月 77万400円 (▲8,100円)
2015年4月 76万6400円(▲4,000円)
となり、3年間で2万100円減額(但し、物価変動分は除く)になります。
一方、厚生年金(標準的世帯の場合の年額値)では
2012年度 277万1300円
2013年10月 274万3100円(▲28,200円)
2014年4月 271万4600円(▲28,500円)
2015年4月 270万500円 (▲14,100円)
となり、3年間で7万800円も減額(但し、物価変動分を除く)になります。
今までの話は、既に年金を受給している人が3年間でどのくらい減額されるかでしたが実は、この年金水準を引き下げられた後のことがより重要なのです。なぜなら、既に受給している世代のみならず、今後受給予定のいわゆる現役世代にも影響がでてきます。
3年間かけて元の水準に戻ったら、次に待ち構えているのがマクロ経済スライドという制度での受給抑制が継続して実施される予定になっているからです。
ここでマクロ経済スライド制度について簡単に述べますと、
年金額を決める場合、従来は物価スライド方式により賃金や物価の伸びに応じて増えていました。しかし、2004年の年金改正で、賃金や物価だけでなく年金の支え手である現役世代の減少や平均余命が長くなることによる年金受給期間の延びなどマクロ経済全体の変化を反映させ、年金の受給を変動させる制度に変更したのです。
しかしながら、その後、物価が下がったために実施が凍結されていました。
しかし、3年後に年金水準が本来の水準に戻るとついに適用されることになるのです。
マクロ経済スライド制度が適用されると、将来、賃金や物価が上がった場合でも、年金受給額はそれから毎年0.9%(2025年までは現役世代の減少分を0.6%、平均余命の伸びを0.3%と想定)マイナスした分しか増えなくなります。
具体的には、
①たとえば物価が1%上昇した場合
1%-0.9%=0.1%・・・・年金は0.1%しか増えない
②物価が0.5%しか上昇しない場合
0.5%-0.9%=マイナス0.4%・・・・改定は行わないので年金は増えない
③物価が0.5%下落した場合
マクロ経済スライド適用は行わないが、通常の物価スライドで0.5%減額される
このように、年金額が目減りしていくことになります。今後、一層の少子高齢化が進むと更に膨らむかもしれません。
いずれにしろ、今年から本格的な年金減額時代に入ることになります。
すでに受給されている人は更なる自己防衛策が必要となるでしょうし、現役世代の方は自分の年金は自分でつくることを再認識することが益々重要となるでしょう。
長谷川 良行 2013年01月20日