家庭経済の耳寄り情報

2013年08月20日

親亡き後の問題を任意後見制度で解決

 知的障害の息子(現在40歳)を持つ60代の母親が数年前にご主人が他界し、身近に頼れる身よりも無く、ご自身の死後や認知症になったときなど今後のことが心配、という例があります。こうした親亡き後の子の問題への対処の一つとして成年後見制度のご利用をお勧めします。

まず、息子さんの法定後見を申し立てましょう。息子さんの財産管理や手続きの代理など後見人が行うことが出来るようになります。
後見人には現段階ではお母様がなられるのが一般的でしょう。しかし、あまり高齢になられてからだと、家庭裁判所が親を後見人に選任しない可能性もあります。早めの検討が必要です。
その上で、お母様が信頼できる方と任意後見契約を結びご自身が認知症になられた際の備えをしておくと良いと思います。

 「任意後見制度」とは、認知症などで判断能力が低下した後に財産の管理や契約手続きなどを自分の選んだ信頼のおける人にお願いできる制度です。
契約書は公正証書で作成し、契約書の中にお願いする内容を具体的に記載します。
併せて見守り契約(任意代理契約)、財産管理委任契約を結ぶことで、判断能力が低下する前から定期的に面談や連絡を取って健康状態や生活状況を確認してもらうことが出来ます。
更に様々な手続きについて相談することも可能です。また、判断能力が十分でも身体的な障がいによって財産の管理や手続きが出来ない場合に備えることが出来ます。
任意後見人には、障がいのある息子さんのことも相談されることを考えると福祉関係に詳しい社会福祉士にお願いするのが良いかもしれませんし、財産が大きい場合はその管理に適した方など状況に応じご検討ください。

 任意後見契約が発効すると、息子さんの後見人も解任されることとなりますので、今後について相談することも必要でしょう。更に死後の事務委任契約を結びお母様が亡くなった後、役所などへの届出や各種支払い手続き、葬儀や埋葬について、息子さんに関する対応など任意後見受任者にお願いしておくと安心です。
そして遺言書を作成し執行者を任意後見受任者に指定することで、死後の相続手続きなど一環してお願い出来ます。
息子さんの後見人についてですが、後任の後見人の希望を裁判所の記録に残しておくか遺言書に明記しておくと良いでしょう。その上で任意後見人に希望を十分に伝えて新たな後見人に円滑に引き継げるよう準備しておきます。
もしそれでも不安であれば最初から息子さんの後見人を専門家に依頼し、当初からお母様の任意後見人と連携して対処していくほうがより安心かもしれません。費用との兼ね合いもありますのでどの方法が良いかご相談ください。障がいのあるお子さんを抱えておられると、頑張るあまり孤立しがちです。お母様と息子さんが今後の人生を安心して過ごしていただけるよう「任意後見制度」を転ばぬ先の杖としてご活用ください。

 相談窓口としては各専門家の団体のほか、市役所の福祉課や社会福祉教議会、地域包括支援センターなどがありますが、資産運用のアドバイスや、ライフプランの作成などを含め、当神奈川県FP協同組合もお役立てください。

ファイナンシャルプランナー・行政書士  山口 貴之  2013年08月20日