家庭経済の耳寄り情報

2014年01月30日

総返済額が少ない「元金均等返済がお得」の条件

 住宅ローン相談で「元金均等返済」をお奨めすると、採用する人が増えています。借入金額・返済期間・金利が同じ場合、「元金均等返済」を選択すると総支払額、つまり元金+利息の総額は「元利均等返済」より少なくなり、長いスパンで見ると得になります。銀行独自の住宅ローンでは「元金均等返済」を取り扱わないものもありますが、「フラット35」ではどの金融機関でも「元金均等返済」を選択できます。
「元金均等返済」は借入金額を返済期間(月数)で割った金額に毎月発生する金利を加えて返済するという方法です。金利の額は前回支払後の借入残高に利率(年)を乗じて12ヶ月で割った金額ですから、第1回目の支払額が一番多く、段々支払額が減少してゆきます。 

 例えば借入金額3000万円、固定金利2%、35年間(420ヶ月)で返済する事例で計算してみましょう。
元金の返済額は3000万円÷420月=71,429円 、毎月この金額を返済します。
・第1月の支払額:71,429円+金利額50,000円(3000万円×2%÷12月)=121,429円
・15年後の支払額:71,429円+金利額28,690円(1721万円×2%÷12月)=100,119円
・30年後の支払額:71,429円+金利額7,262円(436万円×2%÷12月)=78,691円
毎月の支払額が少しずつ減って行きます。「元利均等返済」の毎月支払額は99,379円ですので、「元金均等返済」の第1月支払額は2万円ほど高いですが、このケースでは15年と7カ月目以降(420ヶ月の内187月目以降)は少なくなります。

「元利均等返済」は最初から最後まで支払額が均等になるように資本回収係数という指数を使って計算されます。毎月の支払額:3000万円×0.0397516(*注)÷12=99,379円は最後まで変わりません。毎月発生する金利額を引いた残りの金額が元金返済額になります。
第1月の金利額:3000万円×2%÷12月=50,000円
⇒元金返済額は99,379円-金利額50,000円=49,379円となります。

第1月の元金返済額が上記の「元金均等返済」より約2万円少ないですね。借入残高の減り方が少なく、その分利息の額が多くなるのです。支払利息総額がどのくらい違うでしょうか、「元利均等返済」の利息総額は1174万円に対して「元金均等返済」では1053万円、差引121万円の違いです。
総額で比較すると「元金均等返済」の方が少なく、「お得です」と言えますが、問題点もあります。
 第1に当初支払額が多いこと。若くてまだ収入の低い人は当初の返済額が2万円も多ければ「元金均等返済」は使えないかもしれません。第2は融資審査が第1月の支払額に基いて審査されるため融資限度額が減ることです。借入可能額が減り、自己資金の準備が不十分な場合は資金計画が無理になるかもしれません。

 もうお分かりだと思いますが、収入が多く現在余裕のある人や自己資金の準備をしっかりしている人には一考の余地があります。借入金額・返済期間・金利だけでなく「返済方法」の選択も大切なこと~総支払額で判断すると「元金均等返済」の方が「元利均等返済」より得であることを知っていただきたいと思います。適・不適は個人ごとに違いますので、ライフプランを作り判断をすることをお奨めします。
尚、変動金利型の住宅ローンにも「元金均等型」を扱っている銀行があることを追記しておきます。私は超低金利の現状では固定金利型を選び、将来の安心を確保するのが原則だと考えています。しかし1%を切る極めて低利な変動金利型を強く希望されるお客様には「元金均等型」を選び、少しでもリスクを低くする方策をお奨めしたいと思います。詳しくは別の機会に譲ります。

*注:資本回収係数の数値は期間と金利レートにより異なります。

仁科 眞雄 2014年01月30日