2014年02月10日
資産を家族間で契約により引き継げる家族信託
親が病気がちで体調も悪く、やや痴呆の傾向が見えてきて、財産の管理もままならないようになってくる場合はよくあるケースです。そのような場合、活用したいのが家族信託です。
家族信託は、財産の所有者(委託者・親)が、信頼できる者(受託者・子)にその財産を預けて(移転)、その財産(信託財産)の管理・処分などを委託(信託)し、その財産から生じた利益は受益者(親)に配当するという仕組みです。
信託というと信託銀行にお金を託すというイメージですが、本来は財産管理の仕組みなので、信託銀行の代わりに子供に資産を託すという考え方です。正式な契約で法的効力もありますので委任されなかった子供も口出しはできません。
この制度は、平成19年の信託業法の改正法施工により、信託銀行が行っていた従来の営利目的の信託以外に民事信託についても法的整備がなされて積極的に活用する場ができるようになりました。
例えば、動けなくなり要介護状態になった親の代わりに子供が自宅を売却するケースがあります。介護施設に入れるほど現金がなく、子供も同居して介護することもできない場合、自宅を売却するしか方法はありません。
そのような時、子供が親名義の自宅を売却することは法律で許されませんが、信託の契約を結べば、受託者である子供が親の自宅を売却することができます。売却した資金は親のものですから、子供はその資金を使って親の面倒を見ることができますし、介護施設の費用に回すこともできます。また、資金に余裕があれば、親は子供に生前贈与することもできます。
また、自宅を売却しない場合でも、親は自宅に住み続け、死亡後の自宅所有者を信託契約で子供にしておけば自宅を相続することもできます。
通常、自宅を贈与すれば贈与税がかかりますが、信託の仕組みで親を死亡するまで受益者にしておけば、名義を子供に移しても贈与税は掛からず、遺言と同じようなことを生前に行うこともできるわけです。
土井 健司 2014年02月10日