2014年02月20日
今、中古住宅が熱い、ブーム到来は・・・本物か?
『金妻(キンツマ)』・・・懐かしい響きですが、憶えていますか?
当時、金曜日の夜10時には主婦が電話にでないといわれるほど大ヒットしたテレビドラマ「金曜日の妻たちへ」の略称です。もう30年も前の話です。
登場人物は30代から40代前半の既婚男女、新興住宅街に住み、少しリッチな感覚とおしゃれな暮らしの中で、新しい世代の人間関係とそこに起こる「不倫」がからみ、「不倫ドラマ」ともささやかれ、その後のトレンディドラマの先駆けとなったものです。
その舞台になった新興住宅街の一角が東急田園都市線沿線でした。その影響もあったのか、直後のバルブ景気とともに地価が急騰したことも話題になりました。
あれから30年、その地域はどう変わったのでしょうか?
街路樹は大きく育ち、緑豊かな落ち着いた街並み、住宅本体の手入れもよく整然としていますが、中の住人は高齢化が進み、地域全体が沈滞気味です。また、広い敷地や広すぎる家はメンテナンスや修繕に手間やコストがかかります。子どもが独立し、夫婦二人きりになりますと、駅近の少しスリムな中古マンションに買い替える人が増えています。暮らし向きを伺ってみますと、「鍵一つで戸締りができ、歩いて駅まで行けるのが便利。買い物も病院通いも近くで間に合う」と口を揃えた答が返ってきます。
今年に入り中古住宅の取引が活発です。価格も首都圏ではバブル後以来の高値を記録したという報道もあります。消費増税、景気回復や低金利の影響もありますが、何といっても最大の人気の理由は「割安さ」です。最近の傾向としては、新築にそれほどこだわらない若い人やローンを組みにくいシニア層が多くなっているそうですが、買手の主役は30代の所得が比較的低い層です。特に中古一戸建ての所有者は30歳未満が多く、一方、中古マンションもやはり若い人が主流ですが、シニア層も3割と増えています。
FP視点でも、住宅ローンの借入額が少額であれば、家計の負担が少なく、それだけ生活をエンジョイできるということになります。是非、選択肢の一つに加えて下さい。
では、中古住宅の良いところ、心配なところをまとめてみましょう、
◆良いところ
①新築より安価であること(一般的に新築より3~4割安い)。
➁成熟した街や人気のエリアの好立地が選べる。
③実物を見て選べる(日当たり、通風、眺望、騒音、コミュニティーなど)
④リフォームにより、好みの空間がつくれる。
⑤優遇税制は新築とかわりない。
(1)売り主と買い手が個人なら、業者が仲介しても建物の部分には消費税がかからない。(ただし、業者の仲介手数料には消費税がかかる)
(2)住宅ローン減税は新築と同様、適用対象
◆心配なところ
①建物の構造や設備に欠陥がないか
一方、課題も多い。
1、中古住宅の物件が少なく、流通量も少ない。
日本の住宅の平均寿命(取り壊し)は約30年といわれ、イギリスの約77年、アメリカの約55年に比べるとかなり短命です。
これは、中古住宅の流通が活発でないので売買するよりも建て替えた方が有利であるからだといわれています。
売買する物件が少ない上に、新築住宅を重視する傾向が強い日本では中古住宅の流通は全体の住宅供給量のうち13.5%(平成21年度国土交通白書)と極めて低い数字となっています。(ちなみにアメリカ77%、イギリス88%)
2、中古住宅の資産的評価が低い。
中古住宅の評価は築年数と立地が中心で、メンテナンス状況は評価されないのが実情です。
これからの日本は、人口・世帯数ともに減少していくことが予想され、これまでの成長型社会を前提とした住宅循環は難しくなり、今後は、まだ利用価値のある住宅を長く使っていくことが求められるような社会がくるだろうと考えられています。
政府は、こうした情勢を踏まえ、これまでの「つくっては壊す」から「長持ちさせる」という施策に大きく舵を切り替え、新築については、少なくとも100年使用継続できる「長期優良住宅」を普及、促進して住宅の長寿命化を推進する一方、中古住宅の流通を20年までに倍増させる目標を掲げています。
そして、その目標を達成するために中古住宅の性能を評価して認定する制度を設け、取引を活発にするため様々な環境整備に着手しました。
(1)中古住宅売買後の保証・・・売主が加入する売買瑕疵(かし)保険。加入する際、第三者が建物・性能を検査し合格することが要件。売買後に欠陥が見つかった場合、補修費用が保険金から支払われる。また、これとは別立てで仲介業者が独自で保証するサービスも広がっている。
(2)ホームインスペクション(住宅診断)制度
中古住宅を売買する前に、住宅診断士や専門家による目視の物件鑑定制度。
「1次診断」で問題があれば「2次診断」を行う。
(3)住宅履歴書制度
住宅は計画的にきちんとしたメンテナンスやリフォームをして大事に使えば品質を長持ちさせることができる。これまでどのような維持管理をしてきたかの記録(住宅履歴書)を残し、査定に反映させる。
まだ、整備が緒に就いたばかりですが、3世代住宅の「長期優良住宅」が普及し、中中古住宅の性能評価、適正価格,保証制度などの制度が機能するようになれば中古住宅の流通量は増え、取引は活性化されることになります。本格的な中古住宅ブームはこれからです。FPとしても注目していきたいと思っています。
拙宅も築26年、田園都市沿線にちょこっと引っかかっています。高齢化が進んでいます。それにしましても、住宅取得の際、多額の住宅ローンを組み、苦労して30年、返済し終わった頃には住宅の資産価値がほとんどなくなるとは何とも情けなく、悲しいものですね。
三好 勝 2014年02月20日