2014年03月10日
持家に相続税! どうしたら良いか?
税制改正により平成27年1月1日から相続税の非課税枠が縮少され、いままで相続税の支払いは関係ないと思っていた人たちが課税を恐れて、にわかに慌てています。
一般の会社員で自宅が1軒家の持家であり金融資産をそんなに持っていない家庭では、突然のご主人の死亡により、いままで住んでいた家に相続税が課税され、税金が払えず、家を手放すことになるという悲劇が生じることになります。
このような事態を防ぐにはいったいどうすれば良いでしょうか?
(1)東京国税局管内で平成24年中の相続で財産を取得した人の相続財産の構成は以下のようになっています。不動産が大半を占めていることがわかります。
不動産54.6%、現金・預貯金24.4%、有価証券11.2%、その他9.8%
(平成24年東京国税局 相続財産の金額構成比の推移から)
(2)平成27年1月1日から実施される相続税の非課税枠の引き下げについてまとめておきましょう。
●現在の非課税枠
5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
●平成27年1月1日からの非課税枠
3,000万円+600万円×法定相続人の数(4割減となります)
例えば、法定相続人が3人の場合(妻と子ども2人)の非課税枠は、現在8,000万円ですが平成27年1月1日以降は4,800万円となります。 (3,200万円減少となる。)
この税制改正により、相続税を納税しなければならない人は現在と比較して平成27年1月1日以降では2倍以上になると予測されています。(某税理士法人調べによる)
では、持家を手放さないための対策としてどうしたら良いでしょうか。
1.基本的な対応策
(1)現状の相続財産を把握する
現在の我が家の相続財産を把握すること。
現金、預貯金、および持家の価額(土地については住所地の路線価を調べる。建物については毎年4月ごろ市役所や区役所から送られてくる固定資産税評価額を参考にする。)などを集計して相続財産を把握する。その金額から非課税額を控除して、相続税が課税されるかを確認する。実際には信頼のおける税理士に依頼することが良い。素人判断は危険です。
(2)相続税関連の期限と手続きを確認する
相続税法で規定する期限と手続きを確認する。期限を守ることが重要です。
相続が発生したら、
●相続放棄または相続限定承認は、相続を知ったときから3ヶ月以内に手続きをすること。
●故人の所得税の準確定申告は、相続を知ったときから4ヶ月以内に行うこと。
●相続税の申告と納税は、相続を知ったときから10ヶ月以内に行うこと。
たとえ税金0でも特例(後述)を使う時は10ヶ月以内に申告すること。遺産分割協議書の作成も同じ。
(3)遺産分割でもめないようにする
相続が発生すると例えわずかな財産でももめることがあります。それが人情というものですが、もめない方法としては
●日ごろから家族内でよく話し合うこと。(これが大事)
●家族のために遺言書を作っておくこと。
●分割方法を良く考えておくこと。
2.節税対策
相続税を軽減する方法として考えられるのは
(1)特例を用いる
相続税の計算には以下の様な特例があります。
●小規模宅地等の課税価格計算の特例(内容に十分な注意が必要)
●配偶者の税額軽減の特例
●相続税精算課税制度の利用
●直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受ける場合の贈与税の特例
●教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の利用
(2)専門家を利用する
相続税の計算は複雑な考え方や計算があるため税理士、不動産会社やFP等の専門家の力を借りること。
3.納税資金対策
相続税額の試算を行い、納税金額が算定されたら、貯蓄等で準備をすることになりますが、手元に納税資金が無かったら、どうするか。
(1)持家を売却する
住んでいるご自宅の売却となると、次に住む家を探さなければなりません。希望の金額で売却できれば良いのですが、売り急いで価格が低下する恐れがあります。納期限まで売れない場合は困ってしまいます。
ある不動産会社と税理士法人が提携して、納付税額を立て替えする制度があります。(東急リバブル(株)と税理士法人レガシイの提携)
(2)住み替えをする
住み替えにより売買差額により、納税資金を作り出すことです。上手く住み替え出来ると良いのですが、信頼のおける不動産会社と十分な検討が必要になります。
(3)延納・物納を選択する
相続税は現金で一度に納税することが必要ですが、手元に納税資金が無い場合は延納・物納を選択することもできます。ただし、それぞれ要件があり慎重な検討が必要で、安易には決められません。
上記は、一般の会社員を対象とした方策ですが、土地や建物などの不動産や金融資産を多額に持っている、冨裕層の方はもっと多種多様な方法があり、単純に決められない複雑な方法を検討することが大事で、専門家(税理士、弁護士、不動産会社、FP等)の知識、意見を参考にするため事前に相談することをお勧めします。
佐伯 好也 2014年03月10日