2014年03月20日
「確定拠出年金」での資産形成
「確定拠出年金」(以下DCという)は平成13年に導入され、平成25年12月末では483万人が加入(企業型465万人、個人型18万人)、3月末には500万人を突破する見込みとのことですが、自営業者(注1)を含む世帯総数は5184万世帯ですからまだ10%に満たない状況です。DC制度は企業年金制度の改革とともに投資の活性化を狙うものでもありました。まだまだ道半ば、というより歩き出したばかりのようです。
DC制度加入者の投資信託への運用比率(資産残高ベース)を見ると、当初平成13年DC導入企業では66.6%と高率でしたが、翌年以降の開始企業では20~40%の低水準、リーマンショック後の平成21年に開始した企業では21.7%に大幅低下、元本確保型の運用が8割近い状況です。アベノミクスで昨年は株式市況が元気になりましたが、36.5%にとどまりました(注2)。残念ながらDCに加入した従業員の投資マインドは低く、チャンスを逃がしている気がしてなりません。
元本確保型商品を金利0.5%で複利運用すると30年後1.16倍にしかなりませんが、投資をして平均4%の運用ができると3.24倍になります。元金100万円とすると116万円と324万円の違いです。DCで毎月1万円ずつ投資をし、4%で運用できたら30年後には694万円、元金が360万円ですから334万円の運用収益が生まれますが、0.5%の運用では28万円の収益しかありません。大きな差ですが、4%の運用ができるか否かが肝腎~可能性を見てみましょう。
資産運用の基本は『長期分散投資』と言われますが、長期と言うのは10年以上と考えて戴きたいと思います。分散については資産分散(注3)が良いと言われています。投資商品は株式と債券とに大別され、さらに国内と海外に分けて分類されます。組合せると4種類~国内株式・海外株式・国内債券・海外債券~になりますが、「投資するお金をこの4種類にどう配分するか」が資産分散です。国内株式・海外株式・国内債券・海外債券の4資産に1/4ずつ分散投資した実績を見ると、1970~2012年43年間の平均運用利率は5.7%になっています(注4)。
次に4資産に1/4ずつ分散投資し10年間保有した場合を見てみましょう。100万円を4資産へ分散投資をした結果、つまり25万円ずつ4資産を購入した結果、10年後の資産として最大は292万円、最少は108万円、平均は189万円、平均8.9%の運用利率でした(1980~2012年まで32年間の実績)。これは10年間の長期投資をしてマイナスになったことは1度もなかったことも示しています。また140万円以下(運用利率4%以下)になったのは4回だけでした(注4)。「4%の運用ができる可能性は高い」と言って良いのではないでしょうか。
分散にはもう一つ、時間の分散があります。購入時期を分けることですが、毎月1万円ずつ投資するというのは究極の時間分散ですね。もうお気づきだと思いますが、DC制度はこの長期分散投資がしやすい、投資に適した制度なのです。加えて、DC制度では運営管理機関(注5)が運用商品を提供、平均17.4本ですが(注2)、上記の4資産の投資信託が必ず含まれていますので、「資産分散をしやすい!」・・・・・この点もDC活用をおすすめするポイントです。
DC制度に加入している方は自らの資産形成のために是非積極的に活用して戴きたいと考えます。また自営業者の方々の老後資金作りの方策として国民年金基金や小規模企業共済等がありますが、資産形成の効率を高めるためにDC(個人型)を加えることをお奨めします。
注1:2011年2月時点の家族従業者を含む自営業者は711万人(総務省就業構造基本調査より)
注2:データは企業年金連合会第4回DC制度に関する実態調査結果(2013.12)より
注3:資産分散の他に銘柄分散や時間分散等があります
注4:イボットソン・アソシエイツ・ジャパン(株)の提供データより
注5:運用商品・運用実績等の情報・記録等のサービス提供をする機関(金融機関関連会社が多い)
仁科 眞雄 2014年03月20日