2014年04月30日
投資信託と長期投資
投資信託は、元来長期投資に適するとされるが、実際の平均保有期間が約1.7年であり、残高の約70%を占める毎月分配型は当面の分配金支払いが最大の売りとして販売している。
大手証券会社は従来、系列の投資信託会社を通じて新商品を作っては、大々的に販売勧誘して、売れ行きが鈍る頃には次の商品を投入していく。投資信託保有の短期化は、売り手の事情もある。当信託の販売で得られる手数料を稼ぎたい金融機関が新しい投資信託商品が出る毎に顧客に乗り換えを勧誘する慣行は残っている。
短期売買で、投資信託の設定額も多いが解約額も増えている結果、純資産残高がなかなか伸びていかない。バブル崩壊後、1998年に銀行等が投資信託の販売に参入し販売チャネルが増えたにも関わらず、投資信託市場が拡大しないのは以上の背景があると思われる。(公募契約型投信の残高推移参照)
少子高齢化が進み、超低金利が続く時代に、2015年には投資信託の購入層で多くを占める60、70代の人口がピークを迎え、運用資金に余裕のある世代が先細りしていく状況である。目先は運用資金に余裕がなくても、長期で資産を積立しようとする若年層の開拓が欠かせないと証券会社等は危機感を持っている。
「貯蓄から投資へ」の掛け声のもと、その有力な「受け皿」となるのが投資信託である。金融庁には、長期投資家のすそ野を広げるという政策目標がある。その手段として考案されたのが2014年1月からスタートした少額投資非課税制度(NISA)である。金融庁では同時並行にて「乗り換え勧誘」や「過大な分配金」等について監視を強め、投資信託販売側の事情が優先して、一般投資家が不利益を蒙らないように、投資信託の販売適正化を推進しようとしている。
NISAスタートを契機として、投資信託が長期投資の受け皿となるためには、商品改革案として
①分配金の回数を減らした商品(年1回等)開発
②販売手数料を減額(ノーロード含む)した商品開発
③ドルコスト平均法を利用した積立投資の奨励等がある。
投資信託に魅力を感じて、若者等の投資人口がさらに増えるために、我が神奈川県FP協同組合では従来から開催している「投資教育セミナー」を通して、引き続き中立公正の立場から長期投資の重要性について啓蒙活動を行っていきたい。
佐藤 博信 2014年04月30日