2015年06月30日
類焼損害特約
個人用住宅火災保険にセットできる特約にはいくつかありますが、今回は「類焼損害特約」をご案内したいと思います。自分の住まいからの失火でお隣の住宅や家財に延焼してしまった場合、法律上の賠償責任がなくても、ご近所付き合いを円滑にするため、お隣の住宅や家財を補償する特約です。
上記「法律上の賠償責任ない」の根拠となる法律は「失火の責任に関する法律」です。これは民法の特別法であり、原文は「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス・・・」
つまり、故意または重過失の場合を除き、失火の場合には民法709条の規定(不法行為責任)を適用しないということです。
ところで、火災に限って何故このような法律ができたのでしょうか。一説には、日本では木造家屋が密集していて、鳥取の大火(昭和27年)や記憶に新しいところでは酒田の大火(昭和51年)など一回の火災で数千軒もの家屋が焼失する大火災が歴史上何度も発生しています。このような大規模な損害の賠償責任を失火者に負わせるのはあまりに酷であるという考え方が元にあるようです。
さて、いくら自分が注意しても他人の失火による類焼は防ぎようがありません。
そしてその場合、火元に損害賠償を請求できないわけですから、まず自分が所有する建物や家財には自己責任でしっかり火災保険を付保することは最低限必要なことです。
また、自分が火元になって隣家を燃やしてしまった場合のことを考えてみましょう。
隣家がしっかりした火災保険に加入していれば良いのですが、そうでない場合、自分の家は自分の火災保険で建て直したが、隣家は焼けて更地のまま、というのはどうにも具合が悪いのではないでしょうか?
失火というのは日常生活上の行為に起因する事なので、個人賠償責任保険の守備範囲になります。
しかしながら「失火の責任に関する法律」の規定により法律上の損害賠償責任が存在しないので保険金支払の対象にはなりません。これまで必要性は高かったにもかかわらず、このようなリスクをカバーする保険商品が存在しなかったわけです。
しかし保険自由化の進行のなかで上記の必要性に鑑み、「類焼損害特約」が個人用住宅火災保険にセットできる特約として用意されています。
佐藤 博信 2015年06月30日