2015年09月20日
横須賀市都市計画課がバックアップするシェアハウス
国土交通省は2013年9月6日「違法貸しルーム対策に関する通知について」(*1)を発行し、脱法ハウス対策に乗り出しました。
しかし、この通知がその後の調査(*2)で建築基準法違反物件を大量に作ってしまったことが分かりました。なんと、シェアハウスの約95%が「寄宿舎として建築基準法違反」になってしまったとの事です。(*3)
建築基準法では、シェアハウスの建築用途は「住居」か寄宿舎や共同住宅の「特殊建築物」のどちらかになります。シェアハウスのほとんどがその「特殊建築物」の「寄宿舎」と判定されて、建築基準法違反になったという事になります。
シェアハウスの約8割は東京に集中しています。そこで東京都は、2015年4月1日「東京都建築安全条例の改正について」(*4)を発行し、シェアハウスの一部を(条件が厳しい)「寄宿舎」ではなく「住居」扱いにする規制緩和を行いました。
いま全国で急増中の「空き家」は衛生上の問題や犯罪の問題などがあり、早急の対策が必要になっています。その「空き家」対策の一つにシェアハウス活用がありますが、そこに水を差したのが上記の国土交通省でした。
しかし、そのような中でも、全国各地で独自の空き家対策が始まっています。
横須賀市の空き家対策とシェアハウス活用例を紹介します。
横須賀市はリアス式海岸の地形で山間に多くの家が建ち、老朽化している家・空き家になっている家が多くなってきています。横須賀市では階段の多い山間の空き家対策に乗り出し、谷戸モデル地区空き家バンク(空き家・空き地の紹介コーナー)を立ち上げました。
横須賀市の政策の特徴は、空き家対策を谷戸地区とした事です。谷戸地区は車が入れない階段道路が多く高齢者には辛い高台に家が多くあります、しかし高台も若い人にとっては苦にならない安い物件にする事が出来るのです。
そのような中で関東学院大生が「キャンパス近隣にある空き家を活用できないか?」と空き家問題を調査しました。
調査する中で、横須賀市の都市計画課と地元の工務店の協力を得て、空き家をシェアハウスにする試みが始まりました。(*5)
その結果、市からの補助で、民家のシェアハウスへのリフォームに144万円、学生1人の家賃補助に月額5千円を得る事になりました。今後も空き家をシェアハウスに活用する動きは継続すると思われます。
ここで大事なのは、(横須賀市の)行政が後ろ盾になって、シェアハウスを推進している事です。そうしないと建築違反になる可能性が出てきます。前述のように調査結果では、シェアハウスの95%が違反状態なのですから。
国土交通省も、悪質な脱法ハウスを規制するのはいいのですが、結果的にシェアハウスの供給を抑えて国民の利便性まで犠牲にしてしまうような事をしてはいけません。今後の動向に注目のシェアハウスです。また、今後の国土交通省と地方行政にも注目です。
注)
シェアハウスと似たルームシェアもあります。
シェアハウスは一つの物件を他人同士が部屋ごとに別々に契約する形態。
ルームシェアは一つの物件を他人同士が連名契約する形態。
両方とも玄関・リビング・キッチン・バス・トイレなどは共同で使う。
ルームシェアは国土交通省も「住居」であるとする見解もある。(*3)
参考)
(*1)『違法貸しルーム対策に関する通知について』
http://www.mlit.go.jp/common/001010619.pdf
(*2)『違法貸しルームの是正指導等の状況について』
http://www.mlit.go.jp/common/001025339.pdf
(*3)一般社団法人 日本シェアハウス・ゲストハウス連盟
http://www.jgho.org/
(*4)東京都建築安全条例の改正について
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/topics/h27/topi001.html
(*5)谷戸の空き家改修プロジェクトがスタートしています。
http://univ.kanto-gakuin.ac.jp/main/news/2015012801.html
北條 文明 2015年09月20日