2016年02月20日
相続法の改正の動き「配偶者に朗報」
民法の一部である相続法の改正が進んでいます。まだ内容の詳細は不明ですが、具体案は今年の夏までにまとまり、政府案は来年の初めに作成されて国会に提出される予定です。可決して施行されるのは数年後になる模様。改正される主な項目は次のとおりです。
1.配偶者の居住権の保護
【相続が開始された時に住んでいた建物の使用を認める「長期居住権」を新設】
相続人が配偶者と子供の場合、法定相続の割合は各2分の1です。子供が複数いればその均分となります。相続財産が配偶者と住んでいた家だけの場合、子供がルールどおり遺産分割を要求して「配偶者が住み慣れた家を売却せざるを得なくなることがあります」このような配偶者が生活に困ることを回避することを考慮したものです。
2.配偶者の貢献に応じた遺産分割の実現
【婚姻期間中に増加した財産は配偶者の法定相続割合を引き上げ、それ以外の財産は法定相続割合を引き下げ】
高齢化が進んでいる現在、残された高齢の配偶者の生活保障をするには現在の法定相続割合は低いのでは、との見方があります。反対に非相続人が再婚して数年で相続が発生した場合は、現在の法定相続割合は高すぎるとの意見もあります。
3.寄与分の見直し
【介護や療養看護に貢献した相続人に対する要件を緩和】
今までよくある事例として、子供のいない夫婦間で相続が発生すると「親の介護や療養看護に一切関わらなかった兄弟姉妹が均分相続を主張するのは納得がいかない」と揉めるケースが多々あります。こうした不満をバックに紛争が家庭裁判所の調停、審判に持ち込まれても寄与分が認められる場合は、少ないか認められても金額は少額です。長男の嫁が貢献しても被相続人でないため寄与分はカウントされません。
4.遺留分の見直し
【遺留分減殺請求事件は家庭裁判所で全面的に解決できるように】
遺留分に関わる争いも多くあります。遺留分は最低限保証される相続分で、法定相続分の半分です。しかし、相続財産が親の住宅ぐらいしかない場合には相続人が遺留分を主張して紛争となったとき、共有物分割を巡る争いとなり地方裁判所の扱いとなります。本来相続の紛争は家庭裁判所で解決するのが原則であるのに、遺留分になると地裁にならざるを得ず、紛争が長引きます。
5.遺言書の見直し
【自筆証書遺言書の方式を緩和】
遺言書が自筆の場合、その遺言書の有効性を巡る争いが多い。自筆遺言書の作成には様式が厳格なことで、緩和を主張する声が多くあります。
【事例】配偶者の相続分が増えた場合の計算例
相続開始時の被相続人(夫)の財産を6,000万円。相続人は妻、子供2人。夫婦は結婚して20年経過後に、妻の法定相続分を2分の1から3分の2に引き上げることで合意し、その後、相続が発生したとする。
現行 法定相続割合は妻と子供 それぞれ2分の1
子どもは人数に応じて均分
妻の分は3,000万円、子供はそれぞれ1,500万円ずつ
改正後(配偶者の相続分の引上げ合意の相続分)
妻は3分の2となり4,000万円
子どもは3分の1となりそれぞれ1,000万円
佐伯 好也 2016年02月20日