家庭経済の耳寄り情報

2016年02月29日

分散投資によるのリスク低減化について

 日銀のマイナス金利の導入により、日本の国債や銀行預金等の安全資産の利回りがさらに低下し、また国債等を投資対象としたMMF等の投資信託の一部には、新しい資金の運用は困難とみて、新規・追加投資の購入停止や繰り上げ償還するものも出てきています。

このような、安全資産の運用難の環境の中で、金融資産の運用において、安全資産から投資信託・株式等リスク資産にシフトすることを検討している方は多いのではないでしょうか?

 そこで、安全資産からリスク資産に配分する際に、分散投資のリスクをどのように理解しておけばよいのか考えてみたいと思います。一口に分散投資と言っても、いくつか種類がありますが、ここでは、ラップ口座やバランス型投信やグローバル投信で行われているような資産分散を想定します。

 一般的に、分散投資を行えば、リスクの低減化に有効であるといわれています。粗っぽい説明になりますが、投資理論では以下の通りになります。
リスクとは、資産のリターンの平均からの上下の振れ(変動)を意味します。過去のリターンの推移をみて算出することが多いのですが、一般的にリスクを数値で表す場合、過去最大の振れ幅ではなく、約70%の確率でおさまる振れ幅(一標準偏差)を使います。例えばAという資産の年間の平均リターンが5%でリスクが20%だとすると、この資産のリターンは年間に、-15%~+25%(5%±20%)の間に収まる確率が約70%あることを意味します。また、リスクが小さくなるとはこの幅が狭まることを意味します。

 それでは、分散投資をするとリスクが小さくなるとはどういうことでしょうか?
今、先ほどのAという資産にBという資産(平均リターン10%,リスク30%)を加え、それぞれに同金額投資する場合を考えてみます。
全体の平均リターンが資産Aと資産Bの平均である7.5%{(10+5)÷2}になるのに対して、リスクは両者の平均である25%{(20+30)÷2}より、通常は小さくなるのです。どれだけ小さくなるかは、資産Aと資産Bの両者のリターンの相関の程度の大きさによります。お互いのリターンがプラスマイナス全く逆であれば、大きく低下するでしょうし、逆に全く同じ方向であれば、分散効果のリスク低下効果がなくなります。通常は、二つの異なる資産が全く同じような動きをすることがないので、分散効果のリスク低減効果が得られます。例えば、資産Aと資産Bのリターンが互いに関係なくバラバラだとすると(相関がない場合)、計算式は省略しますが、リスクは資産Aと資産Bのリスク加重平均である25%から18%に低下します。これが分散投資によるリスク低減効果です。

 ところが、リーマンショック時のように、通常ではない、異常な大きさで市場が変動するような場合には、多くの市場が同じ方向に動いてしまい、前述した分散投資によるリスク低減効果が表れない場合があります。ここが重要なポイントです。分散投資をしているからリスクが小さいと思っていたら、異常時には小さくなかったということです。
実際にリーマンショック時には、分散投資による安定したリスクを謳い文句にしていたバランス投信やグローバル投信が想定外の損失を出してしまいました。
また、近年はリスクオン・リスクオフという言葉がよく使われるようになりましたが、リスク資産が同じように動く傾向が強くなってきていることを示唆しているのかもしれません。

 したがいまして、今後皆様方が安全資産からリスク資産に配分する際には、ここで説明しました分散投資のリスクの特徴をよく理解した上で、リスク資産への配分金額を決めていただきたいと思います。また、最近、ラップ口座の残高が伸びているようですが、ラップ口座で説明されるリスクについても分散投資による低減化されたリスクですので、投資金額を決める際には同様の考慮が必要だと思います。

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岸上 和夫 2016年02月29日