家庭経済の耳寄り情報

2016年09月10日

住宅ローン金利競争・・・10年固定、変動金利を逆転

 日銀のマイナス金利政策導入(平成28年2月)以降、長期金利の動向が住宅ローン金利にも大きく影響を与えています。特に最近顕著な現象として従来、変動金利は固定金利(10年)よりも常に低くなっているのが通常でした。
 しかし、ここにきて、メガバンクにおいて10年固定で0.3%台の超低金利が出てきたことから、主要金融機関の変動金利0.6%台を大きく下回ることとなっています。

 この逆転現象の背景は、金融機関にとって貸付残高の維持・拡大は企業のメルクマールであり、かつ金融機関の重要な取組み課題でもあることから、ディスカウントをしてでも維持をしようとする姿勢の現れでしょう。
経済成長の鈍化から企業向けの融資が伸び悩やむ中で、一般消費者向けの住宅ローンにおいて超低金利の提示により顧客確保は最大のチャンスでありかつ重要な事項です。
同時に、金融機関は、現状のマイナス金利政策下のこのような金利状況では、企業収益を大幅に圧迫していることに間違ないでしょう。この状態は、長く続くとは到底思えません。
一方、一般の消費者、顧客からすれば」、住宅ローン金利をできる限り低くする、絶好のチャンスであるといえます。

 とくに、今、住宅ローンを返済中で、短期で返済したい方や返済期間が後10年余りの人にとっては、これらの機関の金利を比較検討して、金融機関に材料を提示して、借り換え交渉を有利に進められるかもしれません。

 さらに、新規のローンについても、住宅金融支援機構の長期固定ローン『フラット35』を見てみると、8月実行では0.9%と過去最低の水準となっています。また。『フラット35s』は、当初10年間は0.6%となっており、その後、残りの期間が0.9%となっています。
このように長期で低金利になっているのは、独立行政法人が取り扱っている独自の住宅金融商品であることからできています。住宅金融支援機構が、『フラット35』を取り扱っている金融機関に手数料を支払い、住宅ローンを買い取り、住宅債権を証券化し、投資家に販売する仕組みになっているからです。
住宅金融支援機構は、そもそも政策的に住宅取得の支援を目的にしているからです。
このような制度について一考することには、価値があると思います。

 さらに、いまでは変動金利型と固定金利型との金利差が殆どなくなってきていることや、住宅ローンは非常に長い期間にわたって返済することからすれば、固定金利型が、利用者にとっては有利な点が多いと思われます。将来の経済状況や金利変動について、確定的なことはなかなか言い切れませんが、どのように判断するかは、自己責任です。

 ところで、平成の始めに不動産価格が異常に高騰し不動産投資へ集中した時期がありました。その時、融資金利の水準は、全く問題にはなりませんでした。このバブルが崩壊した後に、不良債権の山が残りデフレの時代に入りました。
今の不動産投資の活況の状態と住宅ローンの超低金利競争の後に何かが起りそうで不安です。

 『家を持つ』ことは、一生のうちでの最大の買い物です。住宅ローンを組むことは最大の借入でもあります。購入後、生活が苦しくなったり、通勤に苦痛を感じたり、家族の笑顔が減っては意味がありません。そのためにも、家族を交え、将来や夢を具体的に十分話し合ってください。
社会の風潮や不動産会社、金融機関、金利に踊らされずにじっくりと検討して決めていただきたいです。
各家庭で、『家を持つ』ということは、どのような意味、どのような価値があるのかを考える良い機会でもあります。

多胡 藤夫 2016年09月10日