家庭経済の耳寄り情報

2016年11月30日

終の棲家をどう考える?

高齢者の希望する住居形態

 人生3大資金の1つに「住宅資金」がありますが、高齢期になった時のことを考えて住宅を購入している方はどれほどいらっしゃるでしょうか? 住宅購入世代は30歳代~40歳代が多いようですが、通勤や子育ての環境から物件を選んでいるのではないかと思います。高齢期になることを購入時には考えもしないのではないでしょうか?(私はそうでした)

 人生100年といわれる今日、子供も独立して夫婦2人の老後生活は約30年前後ともいわれます。
この長い高齢期の終の棲家としても考える必要があります。
図表1によると、約65%の方が「持ち家で住みたい」と答えていますが、使い勝手は高齢者向きとなってはいないように思われます。

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高齢期での住居場所は「自宅に留まりたい」が65%!

 国土交通省の調査によると、リフォーム受注金額は50万~100万円がほぼ半数で100万~400万円が35%、500万円以上は17%にも達しています。我々ファイナンシャルプランナーが家計相談でキャッシュフロー表を作成する際は必ずリフォーム費用も加味しています。
図表2の身体機能が低下した場合の居住場所の希望(国際比較)から見ると、「自宅に留まりたい」との希望は約65%となっております。やはり住み慣れた自宅での安心した生活を望む方が多いようです。

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高齢期に備えて早めのリフォームを!

 リフォームにはいろいろな制度があります。その諸制度をフル活用しましょう。
リフォーム制度の一例をあげてみましょう。

 年齢が60歳以上等の条件で「高齢者向け返済特例制度(住宅金融支援機構)」を利用すると返済期間を申込人(連帯債務者を含む。)全員の死亡時までとし、毎月の返済は利息のみとし、借入金の元金は申込人全員が亡くなった時に、相続人が返済するという仕組みです。
毎月の返済額が少なくて済みます。

 次に、介護保険制度の対象となるリフォームでバリアフリー工事をする場合の事前の申請をすれば介護保険により最高20万円までを限度とし、最高限度額での自己負担額は所得に応じて工事費用の1割の2万円(補助金18万円)、もしくは2割負担の4万円(補助金16万円)となります。 
年齢が50歳以上等の条件では「バリアフリー改修促進税制」によってローン減税が適用されます。バリアフリー部分の工事費200万円まで2%、それ以外の部分の1%が所得税から控除されます。
(バリアフリーと合わせて1,000万円まで、控除期間5年間)。また住宅ローンの借り入れが要件となっていない所得税減税措置もあります。

 平成28年度の税制改正により、既存の省エネ・バリアフリー改修促進税制の適用対象を追加する形で住宅の三世代同居改修工事にかかわる所得税の減税制度が創設されました。これもローン減税とローンの借り入れが要件となっていない2つの形が整備されております(入居期限:平成28年4月1日~平成31年6月31日までの間に居住)。
制度には一定の条件がありますので十分内容をご確認されることをお勧めします。


  
自宅以外の高齢者向け住宅

 高齢者の増加に伴い「高齢者住宅へ引っ越したい」・「老人ホームへ入居したい」といった希望も年々増加しています。
賃貸型で注目されているのが「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」です。また、施設系では有料老人ホームがあります。比較的健康な方が入居する住宅型から介護が必要な方を中心とする介護型までいろいろなタイプがあります。
公的な介護保険施設には「介護老人福祉施設(特養)」・「介護老人保健施設」・「介護療養型医療施設」という3つのタイプがあります。

長い高齢期には安心・安全な住環境と、要介護期を過ごす環境が必要です。
老後生活を送る住まいについて時間のあるうちに検討し準備をしておきたいものです。

入野 泰爾  2016年11月30日