2017年03月10日
シェアリングエコノミーを持続させるために
近頃急速に台頭してきたシェアリングエコノミーは、資産を提供する側と利用する側の両者にとってメリットがある仕組みであり、一時的な流行現象とせずに正しい理解のもとで長く続けられる仕組みとすることが重要です。
わが国で10年間カーシェアリングの普及に努めてきた筆者は、日本のユーザーがシェアリングエコノミーの急速な進歩についていけずに社会に受け入れられないのではないかと危惧しています。
まず右表に現在のシェアリングエコノミーの種類についてまとめます。
(表をクリックすると拡大します)
シェアリングエコノミーは「所有から利用へ」という掛け声のもと、あくまで「個人の有休資産の有効活用」が目的であり、資産をシェアするために貸し手は新たな投資はしないこと、利用者側は安価で利用できることがメリットです。
したがって現在事業化されている多くのカーシェアリングはこの定義には当てはまりません。何故ならば、事業者が車という資産を自分では使用せずにシェアするだけの目的で準備するからで、正しくはシェアリングではなくレンタルビジネスと定義されます。
どちらも資源の有効活用が目的ではありますが、シェアリングエコノミーのキーワードは「所有者が使用していない時に個人に短期的に貸し出す」ことです。
シェアリングエコノミーでは一般的に所有者は有効に使用できていない資産を所有しており、シェアすることにより少しでも有効に使ってもらえるならば、大きな利益を出す必要はないと考えます。むしろ利益よりも自分が使おうと思った時に使えないリスクを避けようとします。例えばカーシェアで貸し出した相手が事故を起こして自分が使おうとした期間にマイカーを使えないという問題が想定されます。これではシェアしたことがマイナスになってしまいます。リスクには事故の他に犯罪のために使われることや利用者の責任感やモラルの無さから引き起こされる迷惑などもあります。
ここで事業者が介入することで様々なリスクを回避できるようになりますが、営利としての効率を上げるために事業者は借り手が多くなるような仕様の商品(貸出しや返却が便利な場所に車を配置することなど)を揃えるようになりがちです。このようなマーケティングの考え方が入ってきたのが、現在普及してきたカーシェアリングです。
シェアリングエコノミーの先駆けであるカーシェアリングは1987年にスイスで始まりましたが、当初は個人間のマイカーの貸し借りからスタートして、この20年の間に事業として確立されました。魅力的な車や、運転しやすい車を揃えたり、乗り捨てができる仕組みや、カーシェアリング専用の自動車保険などのインフラも整備されました。インターネット、携帯電話の普及もカーシェアリング発展の基になっています。
表中にあるシェアリング項目についても今後は事業として充実してくるものと思われます。現在は事故の際は保証金が支払われる仕組みになっている事業が多く見られますが、いくら保証金を積まれても自分が使いたい時に使えなくなっては意味がありませんから、事故などを未然に防ぐ仕組みが必要になります。犯罪や事故などから所有者と利用者双方を守る法整備も不可欠です。そして何よりユーザーが取り残されることの無いようにシェアリングエコノミーの仕組みに対する理解が必要です。
事業者の参入により急速に台頭してきたシェアリングエコノミーではありますが、まだ日本のユーザーは利用方法について十分な理解がありません。
そのため、現在のような登録制ではあっても不特定多数の人とシェアするのではなく、顔が見える規模のコミュニティでの利用に制限することにより、借り手も貸し手も信頼関係の上に成り立つシェアリングから理解を深めていくことが重要です。
中間法人カーシェアリング普及推進協議会 元代表理事
池 俊夫 2017年03月10日