2017年04月30日
「健康寿命」と「不健康な期間」に感じる違和感
平均寿命と健康寿命との差を、日常生活に制限のある「不健康な期間」と言っています。しかし、健康寿命の指標は3つあります。「不健康な期間」とは何を言うのでしょうか?
厚生労働科学研究費補助金「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」(平成22年)によると平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)の差は、平成22年で、男性9.13年、女性12.68年です。
この「不健康な期間」をちょっと長く感じませんか?
例えば、この期間を基にして、老後の資金や介護費用などを考えると多額のお金が必要になります。
図1平均寿命と健康寿命の差をご覧ください。
健康ではない期間がこんなに長いと思いますか?私は思いませんでした。
この「男性9.13年、女性12.68年」は様々な場面で使われているので、注意が必要です。
まず、指標を整理します。
平均寿命とは、0歳の方が生きる期間の平均です。例えば男80.75年、女86.99年(平成27年)
平均余命とは、ある年齢の人が今後生きる期間の平均です。例えば65歳の男19.41年、女24.24年(平成27年)
健康寿命は男70.72歳、女73.62歳(平成22年)
不健康な期間は(=平均寿命 - 健康寿命)男9.13年、女12.68年(平成22年)
不健康な期間が男性は約9年、女性は約13年ですが、ここで質問します。
(1)「日常生活に制限のない期間の平均」の質問
問1 あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか。
(1) ある
(2) ない
問2 それはどのようなことに影響がありますか。
あてはまるすべての番号に○をつけてください。
(1) 日常生活動作(起床、衣服着脱、食事、入浴など)
(2) 外出(時間や作業量などが制限される)
(3) 仕事、家事、学業(時間や作業量が制限される)
(4) 運動(スポーツを含む)
(5) その他
注)問1で「ある」の回答が不健康な状態です。
(5)は血圧が高くて「運動制限あり」と回答する方もいるのではないでしょうか。
(2)「自分が健康であると自覚している期間の平均」の質問
問 あなたの現在の健康状態はいかがですか。
あてはまる番号1つに○をつけてください。
(1) よい
(2) まあよい
(3) ふつう
(4) あまりよくない
(5) よくない
注)(4)と(5)の回答が不健康な状態です。
回答の結果が図2の(1)(2)です。
この質問の結果を基に「不健康な期間」を算出すると男性は約9年、女性は約13年になった事が分かる気がします。
「まあ、そうかな。」と思います。
ところが、健康寿命の指標はもう一つあります。(3)介護情報(図2黄緑色と下記)です。
健康寿命の指標は3つあります。
(1)客観性の指標である「日常生活に制限のない期間」
(2)主観を反映する「自分が健康であると自覚している期間」
(3)要介護度に基づく「日常生活動作が自立している期間」
市町村の介護保険の介護情報を基に、健康な状態を、「日常生活動作が自立していること」と規定しています。介護保険の要介護度の要介護2~5 を不健康(要介護)な状態とし、それ以外を健康(自立)な状態とします。(要支援1・2、要介護1は自立)
男の65 歳を例にみると65歳以降の健康な期間の平均が17.56年で不健康な期間の平均が1.53 年、女の65歳の健康な期間の平均が20.79年で不健康な期間の平均がと3.11年です。
纏めますと、
「健康寿命」と言われているのは、介護状態になるまでの健康な期間を指すのではないという事です。
男で不健康な期間と言われている9.13年の内で介護2以上の期間は1.53年になります。
「不健康な期間」には「健康に気になるところはあるが、自立出来ている」期間が含まれている事がわかります。
この話の最初のあった「違和感」は「不健康な期間」に介護が必要になっていない期間が含まれていて長期間になっていた事でした。
尚、報告結果の数値はあくまでも平均値であり、個人差がありますので、ご自身の健康に当てはめてお考えください。
将来を予測する事は難しいですが、皆様の個人のライフプランの参考になる事を願います。
北條 文明 2017年04月30日