家庭経済の耳寄り情報

2017年06月20日

やりすぎた相続対策で自宅まで売却することに

 相続対策はやりすぎると命取りになりかねません。素人が相続税対策のための賃貸アパート経営をして、本来取られなくてもよかった自宅まで取られてしまった例をご紹介します。

Aさんは、もともと慎重な人で、相続対策をしっかりしていました。相続財産は自宅と金融資産等で合計約1億数千万円ほどでした。相続人は妻と2人の子供の合計3人で当然相続税が発生することが予測されましたので、Aさんは納税資金をしっかり準備していました。

ところがある日、不動産の営業マンが自宅を訪れ「今度相続税が増税になり、何も対策を打たないでいると大変なことになりますよ」と熱心に賃貸アパート経営を勧められました。最初は断っていましたが、あまりにも熱心に進められるので、とうとう根負けし実行することになりました。

確かに相続税は「0」になりました。賃貸アパートの方は、銀行借り入れの返済額は月40万円ほどになりましたが、毎月の家賃収入は80万円ほどあり最初は順調に見えました。

 ところが、このアパートは駅から遠く、イマイチ入居者が見つかりにくい立地でしたので、更新のたびに新しい入居者が入らなくなってきました。最初は家賃を下げたりして何とかやりくりしていましたが、次第に空室が増えるようになり、気が付いてみると家賃収入では借入返済が出来ない状態になってしまいました。

そこで、家族全員で検討した結果、賃貸アパートを手放すことにしたのですが、業者には足元をみられなかなか売却が出来ず、とうとう自宅まで売却してしまう羽目なってしまいました。

 アパート経営さえしなければ自宅を手放すこともなかったのにと、あとになって後悔することになりました。確かに、相続対策として不動産経営をすることは有力な対策にはなりますが、目的が相続税対策のためにだけになると、肝心の不動産経営のビジョンが伴わなくなり、結果的に素人商売となって挙句の果てに不幸な結果を招くことになりかねません。

 高い相続税を払わなければならない現在、親の血と汗と涙の結晶である相続財産を如何に守り有効に生かしていくか・・・いま日本では大きな課題となっています。

土井 健司  2017年06月20日