2017年09月20日
新しい遺産相続対策【民事信託(家族信託)の活用方法】VOL.1
このシリーズは、2回に分けお届け致します。まず前半は、家族信託についてご案内致します。
[家族信託の仕組みイメージ図] ⇒
家族信託は、2007年に施行された改正信託法により高齢者の財産管理や遺産の承継に信託を利用しやすくなり、「新しい遺産相続対策」として近年注目が集まっています。
「信託」は大きく分けて、営利を目的とした商事信託と営利目的でない民事信託があります。「家族信託」の名称は、「家族信託普及協会」に商標登録されており、民事信託に該当します。
家族信託とは、不動産や預貯金などご自身の大切な財産を生前に信頼できる家族に託し、財産の管理や処分を任せる“家族のための財産管理”における手法の一つです。
相続を渡す人・受ける人の間で取り交わす目的や用途に合わせた【完全オーダーメイド】の信託契約が実現可能な仕組みと云えるでしょう。
では、「遺言による相続」と「家族信託」の違いはどこにあるのでしょうか。
遺言は、被相続人死亡後の財産承継についてのみ効力が発生します。また被相続人死亡後は、(遺産分割協議書提出まで)被相続人名義の預貯金等が封鎖されてしまうため、思うように葬式費用や生活費の引き出しができないという事態に陥ってしまいがちです。
家族信託の場合信託契約を締結した時点から効力が発生しますのでその心配はありません。
また、信託財産の独立性から倒産隔離機能があり、(信託契約後)将来被相続人が信託財産に関係ない部分で万が一債務を負ってしまった場合でも、信託財産が委託者の名義ではないので、被相続人の倒産の影響は受けず信託財産は差し押さえられないという特徴があります。
次に家族信託の有効活用として、どうようなケースに適しているかを見ていきましょう。
① 親が認知症になった場合
内閣府による「高齢社会白書」では、2012年は認知症患者数が462万人と、65歳以上の高齢者の7人に1人であったに対し、2025年には約700万人、5人に1人になると見込まれており、社会的にも深刻な問題になりつつあります。被相続人が判断能力を喪失すると、不動産等を売却することが出来なくなり、預貯金を引き下ろすことも困難になってきます。イメージ図のように、子供を受託者にする信託契約を締結することで、問題は解消されます。
② 事業承継問題
企業経営をされている方の多くが会社の存続に頭を抱えています。受益者連続信託により、通常遺言相続では出来ない二次相続、三次相続など指名した人に受益権を順次承継していく事が可能になります。
③ 障碍のある子を抱えている場合
自分が死んだ後、判断能力が劣る子供の行く末が心配なのは親として当然だと思います。信用できる親戚等を財産管理受託者にすることで、不自由の無い暮らしを確保でき(親として)安心出来ます。
④ 先祖代々の土地・家屋の承継問題
跡継ぎの長男に子供がいない場合、先祖代々の土地・家屋が、長男の死亡により長男の嫁の家系に行ってしまう心配があります。このようなケースでも受益者連続信託を使って、長男の嫁の死亡後、二次相続を兄弟もしくは甥にする事で安心して先祖代々の不動産を守ることが出来ます。
⑤ 賃貸アパート経営
高齢により足腰が弱くなり賃貸アパートの運営・管理に支障をきたすようになってきた事に不安を感じている場合、子供を受託者にすることで不安は解消します。また受託者となった子供が被相続人の死後、相続する事になりますので円滑な事業承継が可能になります。
ここに取上げた事例はほんの一例です。“存命中”に様々なニーズ(希望) に合わせた形で信託契約を交わすことで、あなたの大切な財産を承継できるのが家族信託の魅力です。
ご興味がある方は,筆者までご連絡ください。連絡先:moalive05@yahoo.co.jp 滝田
次回は、成年後見制度との相違及び家族信託の手順についてご紹介致します。
また、ご自分の総資産が知りたい方・相続税が相続人各自どのくらい掛かるのか気になる方は、「相続税概算自動計算機能付エンディングノート【私の想い】VOL.2」をご利用ください。【私の想い】を利用することにより、総資産と相続税概算が簡単に計算できます。
滝田 知一 2017年09月20日