2017年10月10日
「フラット35」の改正について
住宅金融支援機構が提供している住宅ローン「フラット35」が平成29年度では幅広く改正されます。主要点は下記の3点だと思われますので、参考にして頂ければ幸いです。
1、「子育て支援型」・「地域活性型」の誕生
2、「団信付きフラット35」の誕生
3、「リバースモーゲージ型住宅ローン」の誕生
他にも「アシューマブルローン」の導入等がありますが、実用度は未知数ですので、説明は別の機会にします。
1、「子育て支援型」・「地域活性型」
子育て支援や地域活性化について、積極的な取組みをする地方公共団体と住宅金融支援機構が連携し、地方公共団体の住宅取得に対する補助金と合せて、「フラット35」の借入金利息を借入れ当初5年間0.25%引下げる制度です。
「子育て支援型」は
●若年子育て世帯が住宅を取得する場合
●若年子育て世帯と親世帯が同居または近居するために住宅を取得する場合
「地域活性型」は
●UIJターンを契機として住宅を取得する場合
●居住誘導区域外から居住誘導区域内に移住する際に住宅を取得する場合
に適用されます。
神奈川県では横浜市と足柄上郡松田町が「子育て支援型」を、厚木市が「地域活性型」を実施しています。横浜市の場合、補助金の限度額はエコリノベーション(省エネ改修)で80万円、ZEH普及促進補助(ゼロエネルギーハウス)で50万円です。若年子育て世帯が住宅を取得する場合は既存住宅のみが対象、同居・近居の場合は既存住宅だけでなく新築住宅も対象になります。子や住宅の要件、近居する場合の距離等が決められており、予算枠も多くないので、横浜市建築局住宅政策課で早目に確認をして下さい。利用するためには「フラット35子育て支援地域活性化型利用対象証明書」の交付を市や町から受ける必要があります。尚、地方公共団体の補助金制度は従来からありましたが、住宅金融支援機構と連携して内容を充実させたものです。
この制度は従来からの長期優良住宅等一定の条件を満たせば適用される「フラット35S」と併用することができます。「フラット35S」は平成29年9月までは0.3%引き下げでしたが、10月以降は0.25%の引下げに変わります。従って平成29年10月以降は両制度を併用すると「フラット35S」(金利Aプラン)は当初5年間0.5%、6年目から10年目までは0.25%の引下げが適用されます。「フラット35S」(金利Bプラン)は当初5年間0.5%の引下げが適用されます。
2、「団信付きフラット35」の誕生
「フラット35」は固定金利型と低金利を特徴としていますが、高い団信保険料(団体信用保険料)が別途にかかり支払が年1回一括払いという点に難がありました。平成29年10月申込分からは「団信特約料の別払いが不要になる」「団信保険料が金利込みとなる」改革が実施されました。平成29年10月1日以降、「フラット35」の金利は「新機構団信付きの借入金利」となります。団信特約料は0.28%とされており、平成29年9月以前に申込みのお客様に適用される借入金利は「新機構団信付き借入金利-0.28%」となります。平成29年9月以前に申込みのお客様が「新機構団信付きのフラット35」を希望する場合は新たに申込みをしなければなりません。
「フラット35」は団信に加入しなくても融資を受けられることが特徴でしたが、この制度は継続されます。金利は「新機構団信付き借入金利-0.2%」となります。0.28%と0.2%の差に対する説明はありませんが、従来団信保険料は0.358%であったことを考慮すると、財源を捻出する上での苦心策と考えれば良いと思います。
また、保障内容の充実も改正点です。新機構団信の保障内容は「死亡+高度障害」から「死亡+身体障害保障」に変ります。新3大疾病付き機構団信(保険料は+0.24%)は「死亡+高度障害+3大疾病」から「死亡+身体障害保障+3大疾病+介護保障」となりました。「高度障害」の定義が分り難く、トラブルになることが多いようです。「身体障害保障」は身体障害福祉法に定める1級又は2級の障害に該当した時、「介護保障」は介護保険制度に定める要介護2から要介護5に該当した時と明確化されました。
この改善で民間住宅ローンとの比較がしやすくなりました。
細かく見れば、融資手数料の違いや保証料や繰上げ返済手数料の有無等の違いがありますが、概して利用価値が高まったと言って良いと思われます。また「フラット35」は住宅の品質が住宅金融支援機構の定める水準をクリアーしているかの「適合検査」が義務づけられ、コストが5万円前後かかりますが、これは「大きな安心」代と考え「フラット35」の優れた特徴として良いでしょう。
3、「リバースモーゲージ型住宅ローン」の誕生
「リバースモーゲージ型住宅ローン」(住宅融資保険付き※1)は満60歳以上の人向けの住宅ローンです。
※1:住宅融資保険は金融機関の損害を補填するためのもので、利用する人の保険ではない点にご留意ください。
毎月の支払は利息のみ、元金返済は当住宅ローンを利用した人が全員死亡した時に、相続人から担保物件の売却等により一括返済してもらう住宅ローンです。夫婦健在の場合は遺された人が困らないように連帯債務での借入れにする必要があります。妻(又は夫)が借入時に60歳未満の場合は連帯債務にできませんので、60歳になった時点で「債務加入」という手続きをする必要があることを忘れないでください。
資金の使途・融資限度額は4種類あり、借入可能額は下記4通りの資金使途別に①~③の最も低い金額です。
(1)住宅建設・購入資金(子世帯が住宅を購入する場合にも適用可、但し贈与する場合のみ)
①建設・購入に必要な金額 ②5000万円 ③担保評価額の50% or 60%
(2)リフォーム資金
①リフォーム工事費 ②1500万円 ③担保評価額の50% or 60%
(3)住宅ローンの借換え資金
①既存の住宅ローン残高 ②担保評価額の50% or 60%
(4)サービス付き高齢者向け住居の入居一時金
①1500万円 ②入居時に家賃相当分として一括支払いの必要がある費用 ③担保評価額の50% or 60%
この住宅ローンの取扱金融機関は都市銀行ではりそな銀行、神奈川県近辺の地方銀行では足利銀行・千葉銀行・静岡銀行、その他に日本住宅ローン・日本モーゲージサービス等があります。金利や担保評価割合等、商品の詳細内容は金融機関により違いますので、確認をして下さい。金利は3%前後とやや高く、変動金利型が多いそうです。
リバースモーゲージを実施する金融機関が数行に限られている中、現段階で地方銀行を中心に22行の取扱いが決まっており、リタイアメント・プラニングを考える上での選択肢が増えることは望ましいことです。
以上、3つの改正内容を概説しましたが、特筆すべき改正は「団信付きフラット35」の誕生です。「フラット35」の団信保険料は民間金融機関の住宅ローンより高く、大きな弱点でしたが、今回の改正で概ね同じ条件となり、且つ金利に組込まれたため民間住宅ローンと比較しやすくなりました。上記のように保障内容も明確になり、建築基準法より厳格な「適合検査」のクリアーを要す点等を勘案すると、住宅ローン選びに当って“大いに検討に値する”と思われます。
とは言え、融資比率や融資手数料で金融機関別に金利レートが違い、保証料や繰上げ返済の手数料の有無等、厳密な比較や選択は難しい面がありますので、顧客本位を旨とするFPの専門家にご相談戴くのがベストだと考えます。
どうぞ神奈川県FP協同組合(KFP)のご活用をよろしくお願い申上げます。
仁科 眞雄 2017年10月10日