家庭経済の耳寄り情報

2018年01月30日

所有者不明の土地問題について

 最近、新聞や雑誌等で所有者不明の土地、所有者が誰なのかわからない土地が全国で増えている問題が取り上げられています。この問題以前に空き家問題について、建物の倒壊等の危険から「空き家対策の推進に関する特別措置法」により自治体が強制執行できる等対策が進んでいました。空き家問題の先に解決が困難とみられる所有者不明土地問題が待ち受けています。
今回は①所有者不明の土地の実態、②なぜ土地所有者がわからなくなるか、③所有者不明の土地が増えるとどういう問題が起きるか、④所有者不明土地問題を解決する方法等について解説します。

① 所有者不明の土地の実態
 全国の約20%にあたる約410万ヘクタールの土地が所有者不明の土地です。(増田寛也元総務相が座長を務める研究会が公表した)20%というのは、登記簿などからすぐには所有者が判明しない土地で、戸籍情報や聞き取りなどの追跡調査を行っても所有者が特定できない土地は0.41%です。

② なぜ土地所有者がわからなくなるか
 大きな要因は、土地を相続する際に相続人が登記をしないことです。相続時の登記は義務ではありません。登記をしないまま世代交代が進むと、法定相続人の数は増えていき、所有者の所在の特定が難しくなります。東京などに出てきた人が田舎の親の土地を相続しても、管理しきれなかったり、固定資産税の支払いを負担に感じて相続登記をしないこともあります。

③ 所有者不明の土地が増えるとどういう問題が起きるか
 空き家対策や農地の集約化では所有者を探し出すのに時間がかかる等、支障がでています。
所有者不明の土地は地域の活力をそぎます。たとえば「駅前のシャッター街を活性化しよう」と地域の人が企画しても、所有者と連絡がとれない土地があると計画が進まないことになります。

④ 所有者不明土地問題を解決する方法
 この問題を解決できる妙案はありませんが、土地の所有者一人ひとりが登記を行い、国が法制度や情報基盤等を整えていくことが必要です。
今すぐできることは、相続が発生したときの登記の促進です。法務省は来年度の税制改正に向けて相続登記の際に必要となる登録免許税の減免措置を要望しています。
また、国は今後相続登記の義務化を含めて、不動産登記制度について早急に検討する方針です。

佐藤 博信 2018年01月30日