家庭経済の耳寄り情報

2018年05月20日

シニアになって医療保険は必要か?

 そもそも保険は必要なのか?生命保険は必要か?損害保険は必要か?生命保険のうち死亡保障は?医療保障は?がん保障は?介護保障は?
今回は、必要なしの声が多い医療保険についてほんの少し考えたいと思います。

 生命保険の仕組みは、本来助け合いであり、貯蓄と異なります。自分の払い込んだ保険料が他の多くの人を助けるために使われ、自分が助けられるときには、他の人が払い込んだ保険料が使われます。大勢の人がお金を出し合って共有の準備財産をつくり、万一の時にその中からお金を出して経済的に助け合う仕組みです。相互扶助の精神が活かされています。

 医療保険について、保障内容の例としては入院1日10,000円(一回の入院日数60日型)通算1000日、手術代20万円、3大疾病一時金50万円、先進医療特約2000万円など。
4社比較 60歳男性、終身保障、終身払い、保険料13,087円から18,558円(入院3大疾病無制限、7大疾病無制限、8大疾病無制限や3大疾病一時金は各社給付条件や給付回数などが異なり単純比較できません)。
例えば、上記の例で60日入院した場合、60万円給付されます。60万円になるまでに13,087円であれば約46回払うことになります。約4年に1回60日の入院をしないと元が取れません。(他の特約などが支給されないと仮定)
どう考えてもコストパフォーマンスが悪いということです。死亡保障と医療保険とでは,事故の発生確率が異なります。医療保険の方が保険らしくないといえましょう。

 民間医療保険は、公的医療保険(健康保険等)の補完です。保険で必ず儲けてやろうという人は、そもそも保険を選択しない方がいいと思います。
なぜか、全員が事故を発生し保険金を受け取るようなことがあったら保険会社は成り立ちません。
そもそも保険で儲かる人は一部なのです。否、儲けるのでなく相互扶助であり困った時に助けてくれるのが保険なのです。

 数多くの経験を集めると、一定の法則があります。これを大数の法則といいます。公平な原則も考慮し、公平な危険分担を可能としたことにより生命保険事業の収支が安定しました。
また、契約者全体が払い込む保険料の総額と、生保会社が受取人全体に支払う保険金の総額とが相等しくなるようになっています。これを収支相等の原則といいます。一部の困っている方にしっかり保険金を支払うには、多くの人が人助けの精神で保険料を払っているからです。

とはいえ、保険料が高くては、支払いを続けることは無理です。保障内容をよくすればするほど保険料は高くなります。

 本来、必要な保険を選択する方法は、自分にとって、どのような保障がどの程度必要なのか、医療保険なら入院日額をいくらにするのか、1入院日数が30日型か60日型か、入院日数でも3大疾病、7大疾病、8大疾病無制限型を選択するのか、3大疾病一時金特約は?先進医療特約は?いろいろな選択肢があります。(介護保障、認知症保障などもあります)
保障内容を決めたら、保険料がいくらになるか試算します。無理のない範囲で決めます。保険なので継続的に支払えないといけません。無理のない支払い可能のところまで保障内容を削ることも検討しましょう。

 また、医療保険の検討でも、ライフプランに基づいて行います。将来にわたり医療費をどのくらい見積もるか、それを貯蓄と保険でどうリスク補完するか、すべて貯蓄でいけるのか、貯蓄と保険のバランス割合をどうするか、などです。
老後には、健康寿命後の状態(介護や介護保険施設など)や高齢期の住まいの維持管理をどうとらえるかで必要なお金も変わります。生きがいや働き甲斐はどうなのか。すべてトータルで検討すべきです。

 シニアになって医療保険は必要かについて、あなたが医療保険をまず必要とするか。

 さて、高額療養費のことは聞いたことがありますか。初めての方のために解説いたします。
高額療養費制度があるので民間医療保険は必要なしとする意見です。
医療費の自己負担が大きい時には、高額療養費の給付が受けられます。原則、健康保険者の被保険者と被扶養者のそれぞれが、1か月間に同じ医療機関で治療を受けた場合、かかった医療費の合計が所定の自己負担限度額を超えた時に請求することで、その超えた部分が高額療養費として支給されます。
高額療養費について、平成30年8月以降、69歳以下の方(年収約370万円以下)限度額57,600円、70歳以上の方(年収年収156万円~約370万円)も同様です。

 民間医療保険が必要だとしても将来のシニアプランの中で保険料は無理のない範囲か、保障範囲が小さすぎないか、それならいらないかなど色々検討する必要があります。
シニアの方で今健康だから入院なんて考えられないと思っている場合は是非ご検討願います。
また、計画的に貯蓄できない方、まとまったお金が準備できていない方、自営業の方(傷病手当金なし)、一度検討してみましょう。
公的健康保険料の自己負担分(高額療養費適用例57,600円)、差額ベッド代(1日平均6,000円以上)、入院時食事代1食360円、先進医療の費用というように医療費はかかります。
A社の医療保険 60歳男性、日額3,000円、1入院30日型、8大疾病無制限、通算1095日、手術(入院6万円、外来1.5万円)、放射線治療1回3万円、集中治療室管理6万円、先進医療2000万円、5日以内の入院は一律5日分支給、保険料2,860円です。
8大疾病とは、がん、心疾患、脳血管疾患、高血圧性疾患、大動脈瘤等、糖尿病、肝疾患、腎疾患、膵疾患です。

 最後に、生命保険の特色として、預貯金と異なる特色があります。加入すれば、すぐに保障が開始されます。貯蓄では貯まるまで一定の年限が必要で、あり臨機応変の対応ができないケースもあります。貯蓄と保険のバランスが大事です。保険料の負担がきつくあきらめた方も少しずつ医療のための貯蓄をしていただきたく思います。
一方、300万円以上の資金を医療費に使っても全然家計に影響のない方は、一般的には貯蓄でご対応いただいても問題はないかと思われます。

 シニアライフプランをFPとともに作成し、医療保険なんかいらないと初めから決めずに、来るべき100年時代のライフプランの方向付けをしましょう。
当神奈川県FP協同組合は期待に応えることができるでしょう!

佐藤 博明 2018年05月20日