2018年10月10日
これからの住宅の選び方 ~住宅の2020年問題とは~
これからの住宅は、人と環境と家計にやさしい「省エネ住宅」が最低条件になるでしょう。その省エネについて、国の方針が2020年から大幅に変更になること知ってますか?
実は、住宅に関する省エネ基準(最新は「改正省エネ基準」)は、現行はあくまで建築主への努力目標にとどまっていて強制ではありませんが、2020年からは義務(改正省エネ基準の義務化)となります。この基準をクリアしなければ建てられないということで、住宅の2020年問題とも言われています。
省エネ義務化の背景
政府は、10年程前に地球温暖化対策として、2020年までに温室効果ガスを1990年比で25%削減する目標を決定しました。それを踏まえ、CO2排出量が比較的多い住宅でのエネルギー消費を減らす住まいづくりが急務となり、住宅の省エネ化を国の最重要課題としました。日本では、住宅の省エネ性能は世界各国と比較すると最低で、特に現在主流のアルミサッシ窓の断熱性能は、欧米では犬小屋でも使わないレベルと言われており、韓国や中国よりも劣るのが現状です。
住宅の省エネ基準とは
日本の省エネ基準は1980年に制定され、その後段階的に強化されてきました。特に1999年の改正では「次世代省エネ基準」と呼ばれ大幅な見直しが実施され、更に東日本大震災後の2013年には新たな基準として「改正省エネ基準」が導入されました。
今の新築住宅は、ほとんどは省エネ住宅なのですが、2020年からは更に省エネに特化した住宅でなければ建てられなくなります。これが「改正省エネ基準の義務化」です。
ちなみに、次世代と改正の違いを簡単に言うと、次世代は建物の断熱性能のみを決めたものでしたが、改正省エネでは、断熱性能に加え、住宅設備(空調や給湯器、照明、換気など)まで基準を設けるというものです。
住宅の省エネ対応は遅れている!?
国土交通省の調査によると、2015年度における戸建住宅(300㎡未満の小規模)の省エネ基準への適合率は53%とやっと半数を超えた状況です。更に、住宅会社の規模による省エネ達成率の違いも明らかになりました。年間150戸以上の建売戸建て住宅を供給する業者では省エネ基準の適合率は88%であるのに対して、着工戸数4戸以下の業者はその半分以下の39%しかなく、地域密着の中小工務店は大手に比べて対応が遅れているのが現状のようです。また、国交省の住宅省エネ講習会でのアンケート結果(2017.11:建築士事務所協会連合会の発表)によると、省エネ法が義務化された場合に対応出来るかについて、出来るが28%、自信がないや何ともいえないが72%もありちょっと驚きですが、今後の対応度合が気になるところです。これから住宅を建てる人にとっては、業者選びも重要になるでしょう。
省エネ義務化によって得られるメリット
適合義務化は住宅を取得した人達にとっても恩恵になることが目指されています。
ユーザにとって具体的なメリットとしては
(1) 快適な室内環境(夏涼しく、冬暖かい)が得られる
(2) 健康被害(ヒートショック、シックハウス症候群など)の改善
(3) 光熱費の削減 などがあげられます。
ここでは③光熱費の削減について、最近話題のZEH(ゼッチ)=(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を例に取り上げてみます。
ZEHとは、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギー(太陽光発電など)を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅」です。
経済産業省資源エネルギー庁資料(下図)によると、同じくらいの広さの賃貸マンションとZEHによる一戸建てとで光熱費を比較したところ、年間光熱費が16~20万円削減できるとしています。なお、ケース2では、太陽光発電により電力会社に売電することで年間光熱費がプラス2万円になっています。
なお、経済産業省では、「2020年までにハウスメーカー等の建築する注文戸建住宅の過半数でZEHを実現すること」を目標としており、達成に向け、建築する住宅のうちZEHが占める割合を2020年までに50%以上とする目標を宣言・公表した業者を「ZEHビルダー」として登録を行っています(平成30年1月現在、6,303社が登録)。なお、登録されたZEHビルダーは下記HPで検索できます。http://sii.or.jp/zeh/builder/search/
ただ、ZEHにするには相当のコストアップとなります。一概にはいえませんが250~300万円程度(一般的な注文住宅の相場)の追加費用がかかると言われています(仮に年間20万の光熱費削減だと約12~15年程で元が取れる計算)。
しかし国は、「今」ZEHを建てる人に補助金を用意しています。平成30年度の補助金は70万円(低炭素住宅の場合は20万円を追加。「ZEH+住宅」だと115万円)です。更に、蓄電システムを導入した場合は、1kwhあたり3万円(上限は30万円、「ZEH+」は45万円)をさらに追加で補助金がでます。勿論要件をクリアする必要がありますが、実現すれば1戸あたり100~160万ほどの補助金が期待できそうです。補助金は、国が普及に力を入れている「今」だからの恩恵といえるでしょう(年々、減少傾向です)。
住まいの価値を左右するかも
現時点では改正省エネ基準はまだ努力目標ですが、コストアップを理由に以前の基準で建てた場合、2020年には基準を満たしていない住宅として資産価値が大幅に下がってしまう危険があることを認識する必要があります(過去に、耐震基準見直しで同様なケースがありました)。
今後、住宅を購入・建築・リフォーム予定の方は、まずは、改正省エネ基準に沿っているかをハウスメーカや売主業者などに確認することをお薦めします。
CFP、宅建士 長谷川 良行 2018年10月10日