2019年09月25日
老後の資産を伸ばそう ~老後2,000万円という数字だけが独り歩き?~
選挙も終わり、話題になった金融庁の金融審議会市場ワーキンググループが6月3日にまとめた報告書「高齢社会における資産形成・管理」騒動も下火になりました。
2,000万円という数字だけが独り歩きし、老後の資産についての論点もぼけていました。
高齢者世帯には夫婦2人世帯、単身者、他人数の場合等いろいろなケースがあります。
金融庁の報告書では標準的な夫婦2人の世帯がモデルでした。ご自分の場合に置き換えて考える必要があります。
まず、ご自分の年間の家計収支がどうなっているか点検してみましょう。
不足があれば、その金額が資産からの補てんの必要金額になってきます。
生命保険文化センターの資料(総務省「家計調査年報・平成29年」より)によると高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の家計収支(月額)は実収入から非消費支出(税・社会保険料等)を差し引いた可処分所得は約18.1万円で、消費支出は約23.5万円となり、約5.5万円の不足となっています。年間で約66万円の不足です。65歳以上の単身無職世帯では約3.8万円(月額)の不足となります。
1,000万円の預貯金がある世帯は65歳(夫)から取り崩して行くと80歳の時点で赤字になります。また、2,000万円の場合は95歳の時点で赤字になります。
ゆとりのある生活を送る場合の生活費34.9万円(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」平成28年度より)となると、月間約16.8万円の不足で年間約201.6万円不足です。2,000万円の預貯金を取り崩していくと75歳で赤字になります。
では、どのよう対処すればよいでしょうか。
65歳以降も働き続け、収入を確保し、年金受給の繰り下げ等で金融資産の取り崩しを伸ばす方法
また、家計を見直し、支出を押さえ、不足額を軽減するやり方等もあります。
さらに、金融資産を運用しながら取り崩して、資産の寿命を長くしていく方法もあります。
例えば、2,000万円を年利3%の1年複利で運用しながら20年間で均等に取り崩す場合、毎年いくら受け取れるでしょうか(期末受取り)
2,000万円×0.06722(資本回収係数)=134.44万円
8%の1年複利で運用しながら20年間で均等に取り崩した場合の期末受取り額
2,000万円×0.10185(資本回収係数)=203.7万円
さて、どのような金融資産で運用すればよいのでしょうか。
一般的には投資信託への投資ですが、低コスト、設定から10年以上経過している純資産残高の多いインデックス型投信等が考えられます。
海外では米運用大手フィデリティの「マゼランファンド」に代表される好業績を続ける長寿投信があります。
日本ではなかなか育っていないのが実情ですが、金融庁が顧客本位の業務運営徹底を金融機関に求めていますので期待したいものです。
また、ポートフォリオ作成等のアドバイザリーも大事です。
ファイナンシャルプランナーや金融商品仲介業者等がありますが、金融機関からの販売手数料が主体の業者は注意した方が良いでしょう。
金融商品取引法で投資助言代理業を財務省の財務局に登録の独立系のアドバイザーは相談料等がベースです。
いずれにしろ金融資産の寿命を延ばすには自助努力が大事です。
金井 剛 2019年09月25日