2019年10月10日
人生100年時代の「住居費」について考えよう
住宅に関する費用について、人生100年時代に向けて考えておくべき重要な事項を取り上げてみました。
金融審議会の報告書「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月)で話題になった『老後2,000万円』問題の算定根拠に使ったものは、厚生労働省調査のモデルケース「高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)」です。
これによると、実収入209,196円、実支出263,718円となっています。今回マスコミや評論家が、この差額不足金額54,522円(月)の30年分(95歳まで)、2,000万円に注目しました。
ここで、疑問点あるいは課題とするべき事項は、支出の中の「住居費」で13,656円についてです。この金額は世帯住宅の賃貸家賃としては少なすぎます。さらに、マンションの管理費・修繕積立金にしても少なく感じます。全国の全世帯の平均とすると、この様になるのでしょう。
住居費は具体的には?
「住居費」とは、住居に関するす費用であって、一般的には家賃、地代、住宅ローン、固定資産税、修繕費等です。マンションの場合、管理費・修繕積立金も含まれます。
賃貸住宅の場合は、家族構成、転居等により状況に応じて家賃負担の増減を調整できます。しかも修繕費は不要といったメリットもあります。但し、家賃といった大きな経費負担を生涯、追います。
一方、自宅を所有している人(持家)は、住宅ローンが終われば、大幅な支出(負担)減少と資産の蓄積といった大きなメリットがあります。しかし、修繕・維持を生涯自己管理していきます。
賃貸・持家のいづれにしても、家計費の中での、住居費の見積もりは生活スタイルや年代によって変化することから過小にならないよう十分に注意しましょう。
さらに、人生100年時代の『終の棲家』をどこに求めるかによって、住居費は大きく変わってくるでしょう。持家を売却して、ハウス・リースバックにする。または、高齢者向けの住宅に移る。この場合、分譲型・賃貸型では、住居費に差異がでます。さらに、田舎・海外へ移住といった選択肢も考えられます。
住宅の耐用年数は?
住宅を購入して、一般的に住宅ローンを30年~40年近く支払っていきますが、いったいいつまでそこに居住できるのでしょう。戸建て住宅、マンションの耐用年数はどれくらいなのでしょうか?
法定の耐用年数は、固定資産税の課税対象の観点から決められています。
《法定耐用年数》
軽量鉄骨造 19年
木造 22年
鉄骨造 34年
鉄筋コンクリート造 47年
《実際の居住年数》
一戸建て おおよそ 30~50年
マンション おおよそ 50~60年
但し、実際には、耐用年数よりも長く生活しているのは事実です。このためには、定期的な見直しによる、修繕・補修と外装・内装工事等の保守管理が必要です。
一戸建ては、見直す範囲・程度によって個人差はあるものの、リフォーム費用として凡そ300万円から1,500万円の支出は必要でしょう。あくまで、自己責任の範囲で長く快適で堅固な住宅に過ごせます。
マンションは管理組合に一任だけでなく、自己の部屋をしっかりと管理しましょう。
ライフ・プランニングをしましょう!
冒頭の厚生労働省の統計は、全体の平均であり、傾向値としては大いに参考になりますが、各家庭に沿うものではありません。
家族構成の変化、就業先の雇用環境の変化、給与賃金の見直し等々を含め、住宅を賃貸にするのか所有にするにか、また老後移住か『終の棲家』をもとめるのか等々ライフプランを作ってみましょう。
その際、忘れがちな住宅の修繕や維持費の見積もりなど、『住居費』についても再度検討しましょう。
これは、自己の家計費を見直し、将来を見つめる良い機会となります。
ライフプランを幅広く考えておくことは、人生100年時代に向けて、安心して過ごすことに結びつきます。
多胡 藤夫 2019年10月10日