家庭経済の耳寄り情報

2020年01月10日

ちょっとの違いで「相続税を5倍も多く払う」ことに

 商店街でレストランを営んでいた伊藤さんは、会社組織にして、社長として家族でレストランを営んでいましたが、自己所有の土地の地代や家屋の家賃を取っていませんでした。

しかし、伊藤さんが亡くなった時、伊藤さんは土地の所有者であるので、遺族には相続税が発生しましたが、土地については評価額の100%で相続税が掛かってしまいました。

この場合、土地オーナーとして伊藤さんが会社に土地を貸すことによって、地代や家賃を取っていて、一定の要件を満たせば、伊藤さんの土地は「特定事業用宅地等の特例」が適用され、土地の相続税評価額を8割減額できたはずでした。

つまり、伊藤さんは法人組織にして、地代を取っていなかっただけで、家族は実に5倍の相続税を支払うことになってしまいました。  しかも、会社組織にすることによって、かえって余計な税金や税理士報酬などのコストが掛かっていました。

また、伊藤さんは、わざわざ会社組織にしないで、個人事業主としてレストランを営んでいれば、「特定事業用宅地等の特例」が適用され、土地の評価額を8割減額できたはずでした。   


 家族経営の会社では、地代・家賃を取っていないオーナーが実に多くいます。 自分が社長としてレストランを営むのだから、わざわざ地代・家賃を取ったりはしないからです。 しかし実際は、形式的には会社であっても、経済的形態は個人事業と何ら変わりないことが非常に多くあります。 

「何故、会社組織にするのか?」との問いに、「飲み屋のママに社長と呼んでもらいたいから」との答えもあながち笑えない本音の話かもしれません。

相続・事業承継には、このような「落とし穴」が、実に多く見受けられます。

相続・事業承継に関するリテラシーが不足するだけで、貴重な財産を失いかねないことにも留意し、生前から対策を考えておくことの重要性を是非認識しておきたいものです。

土井 健司 2020年01月10日