家庭経済の耳寄り情報

2020年10月25日

金価格高値更新をどう考えるか

 金の価格(ドル建て)が2020年7月24日に2011年9月5日以来の史上最高値を更新しました。
7月28日には円建て価格が史上最高値を40年ぶりに更新しました。
これは何を物語っているのでしょうか。

金相場の推移
 米国ニクソン大統領が1971年8月15日に突然ドルと金との交換停止を発表(ニクソンショック)したため、金の通貨としての役割は終焉を迎えました。金の円建て価格は約8年半で14倍の204,850円/トロイオンスとなり、大天井を付けました。その後、1999年9月15日まで約20年の長期にわたって下落しました。

金は変動の大きい投資対象
 20年も下落し続け、1999年の安値から約21年かけて上昇し、現在の水準となってきました。
このように金の価格は大きく一方向に動きやすく、変動幅の大きいアセットクラス(投資対象)でした。また、金には金利が無いため、長期分散投資には不向きのアセットクラスで、ポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)に組み込むには不向きとされてきました。

超低金利と通貨価値の下落
 米国の長期国債の利回りは0.5%程度、消費者物価の上昇率は1.0%(2020年7月)なので、実質金利はマイナスです。日本の政策金利も-0.1%で債券を保有していても金利収入はほとんどつかず雀の涙の状態です。
 コロナ対策もあり各国は財政出動で景気のテコ入れを図っています。米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は事実上のゼロ金利政策が少なくとも2022年頃までは続けるとのシナリオを示しています。
 ドルを筆頭に各国の通貨供給量が拡大し、通貨の価値が金に対して下落してきています。

金は通貨
 金はブレトンウッズ体制の終焉により基軸通貨を支える役割を終えていますが、各国の中央銀行は外貨準備として、大量の金を保有しています。
金は依然として通貨としての役割を有していると言えます。

資産配分(アセットアロケーション)の見直し
 投資運用の伝統的な考え方に収益性の異なる資産を組み合わせる方法があります。
保有資産を日本債券、日本株式、外国債券、外国株式の4つのグループに分け、その配分のバランスを取るやり方が一般的です。
 債券の金利収益が見込めない分を金の保有を増やしてバランスを取ることを考えても良いのではないでしょうか。
 債券の配分を減らし、現物の金、金のETF、または金に投資する投資信託等のご自分に合った商品を選択して資産配分(アセットアロケーション)の見直しをしてみるのも良いかもしれません。

金井 剛 2020年10月25日