家庭経済の耳寄り情報

2020年12月25日

ESG投資について

 最近、経済新聞ばかりでなくネットニュースでも、ESGという言葉が目立つようになってきています。

 ESGとはそもそも何なのか、なぜ最近メディアのなかで目立つようになってきたのか、またこれから20年~30年先を見越した長期投資にどのような影響を持つものなのかを考えてみたいと思います。

 ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つの単語の頭文字からとった造語で、今日企業の長期的な成長のためにはESGが示す3つの観点が必要だという考え方が世界的に広まってきています。一方ESGの観点が薄い企業は、大きなリスクを抱えた企業であり、長期的な成長が望めない企業だと捉えられています。

 ESGの観点は機関投資家の間で急速に広まってきており、投資の意思決定において、従来型の財務情報だけを重視するのでなくESGも考慮に入れる手法が「ESG投資」ということになります。

 それでは、ここにきてESGの言葉が頻繁に出てくるようになったのはなぜでしょうか。

 ESG投資の起点は、2006年に国連が発表した責任投資原則(PRI)と言われていますが、日本ではそれほど注目はされていなかったようです。
2015年に温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定が締結され、欧州では当たり前となっていた「ESG投資」が日本でも注目を浴びるようになったようです。

 しかし、米国においては、石油業界と関係が強くどちらかというと「ESG投資」に否定的だったトランプ大統領がパリ協定から脱退し、ESG投資の先行きがこの2~3年の間不透明となっていました。

ところが、2020年の大統領選挙で環境問題を重視するバイデン氏が勝利して、パリ協定への復帰やクリーンエネルギ-関連の環境インフラへの資金投入ということが公言され、バイデン政権であれば米国内におけるESG投資制限の政策実施に対して慎重な態度で臨むであろうという期待が大きくなってきています。
このような情勢のなかで、日本国内でも「ESG投資」があらためて注目を集めるようになってきました。

 最後に、長期投資とESGの関連を考えてみたいと思います。

 今年誕生した菅首相が、はじめての臨時国会の所信表明演説で、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする。」と表明しました。このことは、環境への影響を配慮した脱炭素社会の実現に向けて、国全体で取り組んでいくということです。脱炭素社会の実現に向けてのイノベーションを進める企業に対して、国として後押しをしていくことになります。この流れは、日本以上に欧州で強いものであり、今後は米国でも強まるものと思われます。

 さらに、世界経済の思潮に影響を与える世界経済フォーラムの会長は、「アフターコロナの世界で、持続可能な価値を創造するには、ステークホルダー資本主義と環境・社会・企業統治(ESG)に配慮することがますます重要になった。」と主張しています。経済や資本主義を立て直すための有力な手立てとしてのESG投資が勢いづくことは間違いないものと思われます。

 すでに、多くの長期運用者は投資対象を選ぶ前提として企業の環境・社会問題への取り組みを考慮しています。

 ESG投資のおかれている状況を簡潔にとらえてみましたが、実際にESG関連で多くの運用商品が販売されています。ESG関連の運用商品についてお聞きになりたいことがありましたら、神奈川県ファイナンシャルプランナーズ協同組合にご連絡いただければ、ご案内させていただきます。

 知識として持つということも、決して無駄にはなりません。

荒川 衛 2020年12月25日