2021年03月10日
「所有者不明土地問題」解消策閣議決定
国土交通省によると、2016年度の調査で全国約62万筆の土地の内、約20%が不動産登記上で所有者が確認できない土地となっています。この約20%を面積で表すと約410万haで、九州本島の面積(約367万ha)を上回っていると言うことがアナウンスされ、「所有者不明土地問題」が、近年話題になっておりました。
今年3月5日の閣議で、政府は「所有者不明土地問題」の解消策を盛り込んだ民法などの改正案を決定しました。
その解消策は、大きく「民法等の見直し」、「不動産登記法等の見直し」、「土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設」に分かれますが、今日は、その中で「民法等の見直し」を検討したいと思います。
「民法等の見直し」については、「相隣関係」「共有等」「所有者不明土地管理命令等」「相続等」の部分が改正されますが、そのうちの「共有等」に焦点を絞ってみたいと思います。
「所有者不明土地」発生の大きな原因の1つは、現在の共有制度に起因しています。現行民法では、共有物の変更(処分)は共有者全員の同意が必要であり、共有関係のまま数次の相続が発生すると、共有者の中に氏名・所在等が判明していない者(以下「不明共有者」という。)が出て来て、共有物の変更(処分)が実質的に不可能な状態となっていました。
また、変更(処分)までに至らない管理行為は、共有持分の価格の過半数の同意を得れば決めることができますが、どのような行為が管理行為であるのかが分かりにくい場合もあり、慎重を期して共有者全員の同意を得て管理をする場合、やはり、不明共有者がいると管理行為ができない状態になるケースが発生していました。
そこで、改正民法では、共有物の変更行為について、民法251条(共有物の変更)の規律を改め、不明共有者に対して公告等をした上で、残りの共有者の同意で共有物に変更を加えることができる旨の裁判を、することができるようになる予定となりました。このことにより、「所有者不明土地」の処分がしやすくなると思われます。
共有物の管理についても、現行民法252条(共有物の管理)の条文の規律を改めることで、不明共有者に公告等をした上で、残りの共有者の同意で、残りの共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判を、することができるようになる予定となりました。
また、民法258条(裁判による共有物の分割)を改め、共有者が不明共有者の持分相当額の金銭を供託することで、不明共有者の持分を共有者に取得させ、不明共有者との共有者状態を解消させる制度の創設を予定しています。
以上のように、民法の共有制度を見直すことで、土地の利用・処分の円滑化に大きく貢献すると思われます。
今回の解消策は、最終的には国会での法案可決後に公布、施行となることになりますが、今後の「所有者不明土地問題」解消の進展に大きな一歩になるのではないでしょうか。
熊谷 利雄 2021年03月10日