家庭経済の耳寄り情報

2022年05月25日

資産運用の性格を持つ、変額保険のトレンド

 変額保険とは、契約者が払い込んだ保険料の一部を契約者が選択した株式や債券等で運用し、その運用実績で死亡・高度障害保険金(以降、死亡保険金と略す)や解約返戻金、満期保険金の額が変動する保険です。

運用実績が好調であれば、死亡保険金や解約返戻金、満期保険金の金額が増えますが、運用実績が振るわなければ解約返戻金や満期保険金として受け取る金額が保険料の支払い総額を下回ることもあります。
しかし、死亡保険金には最低保証(基本保険金額)があるため、運用実績がまったく振るわなかったとしても、最初に決められている最低保証の金額を下回ることはありません。

今までの商品では、死亡・高度障害の保障のみが主流でしたが、最近のトレンドとして、「死亡・高度障害」だけではなく、「死亡・高度障害かつ介護保障」や「死亡・高度障害かつ三大疾病一時金保障」というような、さらなる保障を加味した商品が出てきています。

例えば、三大疾病一時金の保障が付いた変額養老保険では、満期までの間に万一、三大疾病に該当すれば、一時金として保険金が受け取れますし、保障を使わず健康なまま満期を迎えれば運用成績に応じた満期保険金が受け取れます。

 具体例で見てみましょう。A社で40歳男性が70歳満期、死亡保険金かつ三大疾病一時金200万円、月払保険料5,880円の変額養老保険に加入した事例です(2022年5月時点)。
運用成績が年率マイナス3%で満期まで推移した場合、70歳時点で支払い保険料累計に対する返戻率は13%しかありませんし、年率0%で満期まで推移した場合の返戻率も40%にとどまります。実際の運用においては、運用実績が年マイナス3%をさらに下回るケースがありうることにも注意が必要です。

しかし、運用成績が年率3%で推移した場合には返戻率94%と、支払った保険料のほぼ全額が戻ることを期待できますし、年率6%で推移した場合には返戻率が180%となり、支払った金額以上が戻る可能性も全くないわけではない、という内容になっています。
(※返戻率の詳細な計算方法については、各商品の注意事項を参照のこと。)

 変額保険には一時払いタイプ・月払いタイプなど様々な商品がありますが、月払いの契約であれば、ドルコスト平均法のメリットを享受しながら長期に加入するので「長期・積立・分散」という資産形成の手法になります。想定外の損失には留意が必要なものの、リスクをコントロールしながら一定のリターンをもたらしやすいやり方であると一般的には考えられています。
また、最終的に保険金や解約返戻金を受け取った際、利益があった場合には課税対象になりますが、運用中は配当金や運用益に対しての課税がないので、運用対象を組み替える際に利益が出ていても税金で減らすことなく効率的な運用が可能です。

「『運用は運用』、『保険は保険』として分けるべき」という考え方もあると思いますが、保険の保障が必要な方であれば、保険のしくみをよく確認した上で、「保険機能も備えながら資産運用もできる」ものとして、選択肢の一つに加えてみてもいいかもしれません。

森内 東香 2022年05月25日